新しい時代のガバナンス(2)日本企業の競争力

2023/10/02 阿部 功治、中山 尚美、船木 陽介
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本連載では、「新しい時代のガバナンス」というタイトルを掲げ、グローバルベースで企業経営を取り巻くリスクが多様化・複雑化するなか、日本企業が競争力を高め成長のモメンタムを取り戻すためには何が課題なのか? 何をすべきか? について、「ガバナンス」の視点から論じています。

第2回の本稿では、日本企業の競争力低下や停滞の現状を概観しつつ、「ガバナンス」が果たし得る役割について考察していきます。

日本企業の存在感の低下

第1回でも触れたように、IMD(国際経営開発研究所)が発表した2023年度の世界競争力ランキングにおいて、日本は64カ国中総合35位と過去最低の順位となりました。特に「ビジネス効率性」の分野が47位と低迷しています。

企業の時価総額ランキング[ 1 ]においては、1989年には世界上位50社のうち32社を日本企業が占めていましたが、2022年時点ではわずか1社となり、約30年の間に日本企業のグローバル市場における存在感が著しく低下したと言わざるを得ません。

企業価値創出力の低迷

主要国の株式市場を見ると、日本の株式市場の時価総額も近年堅調に成長しているものの、米国、欧州および中国の株式市場の成長スピードと比較すると大きく見劣りしています。米国の2市場(NYSE、NASDAQ)を合計した時価総額は、日本の株式市場の約8倍もの規模であることから、時価総額の規模の差は今後さらに広がる可能性が見込まれます。

こうした状況のなか、東京証券取引所は2023年3月、プライム市場・スタンダード市場の全上場会社に向けて、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を求める通知を出しました[ 2 ]。これは、プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE(自己資本利益率)8%未満、PBR(株価純資産倍率)1倍割れという、資本収益性や成長性の観点で課題がある状況を問題視したもので、多くの企業において投資家を納得させ得る十分な価値創造が行われていない可能性が示唆されています。

イノベーション創出力の停滞

企業が価値創造を図るためには、自社の競争優位を創出するための持続的なイノベーションが不可欠となります。

WIPO (World Intellectual Property Organization)の2022年版グローバル・イノベーション・インデックス (GII) によると、世界でイノベーションが進んでいる上位に入っているのは、スイス、アメリカ、スウェーデン、イギリス、オランダで、アジアでは韓国(6位)、シンガポール(7位)、中国(11位)、香港(14位)が15位以内に入っています。中でも中国は2012年には34位に付け、2016年に「イノベーション・リーダー」の仲間入りをして以来、毎年順調にランキングを上げ、2022年はトップ10に肉薄する11位となりました。一方、日本は前年同様13位となり、価値創造に不可欠である持続的なイノベーション創出力が停滞している状況が推察されます【図表】。

【図表】2022年 GIIランキング(全132カ国/経済圏)図表
2022年 GIIランキング(全132カ国/経済圏)図表
(出所)グローバル・イノベーション・インデックス (GII) 2022年版(WIPO)をもとに当社作成

日本企業に求められるガバナンスの確立・拡充

以上のように、日本および日本企業のグローバル競争力は、残念ながら低下・低迷が続いている状況です。

グローバルベースで企業経営を取り巻くリスクが多様化・複雑化する「新しい時代」となった今、日本企業が従前のやり方を変える必要があるのは明らかです。日本企業は、「他社はどうしているのか?」といった横並びを意識するのではなく、「自分たちがどうしたいのか?」「どうすれば競争に勝てるのか?」「どうすれば生き残れるのか?」「新しいビジネスチャンスは何か?」といったように自ら考え、リスクをとって判断し行動することを、より一層重視する必要があります。時には前例のない思い切った経営判断も必要であり、その過程では安定をあえて避け、危機に対処しなければならない場面が生じる可能性もあります。

こうした新たな経営への転換が求められる中、経営者の認識・判断・行動を適切に制御し、企業努力を組織全体で正しい方向に向けていくためには、適切なガバナンスが不可欠となります。経営者の勇気あるリスクテイクを単なる蛮勇にしてしまうことなく、また、あらぬ不祥事で足元をすくわれることなく経営者が真剣勝負を仕掛けるためには、コーポレートガバナンスはもちろんのこと、それと有機的に連動した、執行レベルも含めた広義の「ガバナンス」の確立と拡充が必須となります。

第3回と第4回では、ガバナンスに関する日本企業の実態と課題について、昨今頻発する日本企業の不祥事の観点から整理していきます。

【関連サービスページ】
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ガバナンス改革

【関連レポート・コラム】
新しい時代のガバナンス(1)日本企業を取り巻く経営環境
新しい時代のガバナンス(3)日本企業における不祥事①
新しい時代のガバナンス(4)日本企業における不祥事②
新しい時代のガバナンス(5)日本企業に求められる「ガバナンス」


1 ] 「【STARTUP DB 独自調査】2022年世界時価総額ランキング。世界経済における日本のプレゼンスは?」フォースタートアップス株式会社 https://www.forstartups.com/news/sekaizikasougakurankingu2022 (最終確認日:2023/9/21)
2 ] 東京証券取引所「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」

執筆者

  • 阿部 功治

    コンサルティング事業本部

    サステナビリティビジネスユニット GRCコンサルティング部

    部長 プリンシパル

    阿部 功治
  • 中山 尚美

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第3部

    プリンシパル

    中山 尚美
  • 船木 陽介

    コンサルティング事業本部

    経営コンサルティングビジネスユニット コーポレートアドバイザリー部

    シニアマネージャー

    船木 陽介
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