人口の地域格差がもたらす生活環境への影響とその対応方策
戦後、世界に類い希なる経済発展を遂げる中で、わが国では中山間地域をはじめとした地方圏から三大都市圏への人口流出や、三大都市圏の中でも東京圏への一極集中という「人口の地域格差」という問題を常に認識してきた。
こうした問題に対し、わが国では「国土の均衡ある発展」の政策理念に象徴されるように「地域格差」の是正に向け、全国総合開発計画や各種法制度に基づき対策が講じられてきたところである。
しかし、人口の地域格差は是正されることなく、形を変えながら今日まで存在し続けている。そして、人口の地域格差の最も大きな影響を被ってきた中山間地域においては、人口の極度な流出と住民の超高齢化を迎え、衰退・消滅する集落が増加するなど、その持続性がかつてない危機に瀕している。
中山間地域の集落は農林地など周辺の二次的自然をうまく活用し、その多面的機能を維持・保全しながら生活を営んできた。そのため、集落が衰退・消滅するということは二次的自然が維持・保全されず、多面的機能が劣化することを意味し、その生活環境への影響は河川などを通じ、周辺地域や流域の都市部にまで及ぶことが懸念されている。
人口減少を迎えたわが国において、これまで維持してきた中山間地域のすべての集落を永続的に維持していくことは困難である。そこで、われわれの生活環境を次世代に良質な状態で引き継いでいくために新たな維持・保全方策が求められている。その方策の一つとして、集落の住民に依拠するのではなく、都市住民を含めた関係主体が参画し、地域の維持・保全ビジョンを共有し、合意形成(約束と責任)を図っていくことが有効である。
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