医療の質・安全の評価に関する動向と今後の展開

2008/04/01 村井 佐知子
医療
評価
ヘルスケア

近年、医療に対する患者の関心が高まり、患者が医療機関や医師を主体的に選択しようとする動きが広がっている。患者が医療を適切に選択できるよう、医療の質・安全に関する情報提供の重要性が高まっている。
本稿では、医療情報の提供をめぐる法制度の動向などを整理し、国内外における医療の質・安全の評価システムの現状分析を行い、わが国における医療の質・安全に関する評価システムの今後の展開について、提言をまとめた。
わが国では、2004年に財団法人医療機能評価機構による「ヒヤリ・ハット事例情報データベース」の運用が、2007年4月には厚生労働省による「医師および歯科医師の資格確認のための検索システム」の運用が開始された。また、同年4月には改正医療法により「医療機能情報公表制度」が創設された。こうした取り組みは、医療の質・安全の向上に向けた有効な手段のひとつとして期待されているものの、医療機関の病床数や診療科あるいは医師の所在といった基本的な情報の提供を主としており、医療サービスの結果や診療科別にまで詳細化された情報の提供はほとんどなされていない。
海外では、米国を中心に、わが国に先行して医療の質・安全に関する評価システムの構築が進められてきた。これらのシステムでは、評価結果は一般公開され、評価を受けた医療機関が診療の質の改善を図るために利用するだけでなく、患者等が医療機関を選択する際にも利用できる。
わが国における医療の質・安全の評価システムは、医療機関を中心とする組織や学会等により整備が進められている。事例分析の結果、今後の課題としては、立場の異なる複数の評価主体による多面的な評価体制の構築、評価事業参加率の向上および評価対象範囲の拡大による評価システムの普及、評価の高頻度化および評価期間(評価実施からデータ還元まで)の短縮化による評価結果の利活用の促進、患者が医療機関を選択する際に利用可能な情報の開示、継続的に評価事業を実施するための仕組みの構築、医療の質をより適切に把握するための評価項目の充実、評価結果の有効性を高めることを目的とした臨床データの分析方法や評価結果の表現方法の検討、といった事項があげられた。
わが国の医療は今後、真に患者本位の医療の実現を目指して、前述の課題への対応方針を検討し、医療の質・安全の評価システムの改善を進めることが重要である。

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