オープンイノベーションと日本企業の知財戦略経営

2009/07/01 渡部 博光
知的財産

研究開発を自社だけで完結するのではなく、他社からも柔軟に調達することで、研究開発効率を向上させ、さらに新たな価値を創造しようとする「オープンイノベーション」が注目されている。この「オープンイノベーション」は単なる補完的な外部調達を超えた概念であることから、特に、大企業のR&D機能が「オープンイノベーション」でどこまで影響を受けるのか、また知財のマネジメントになにが求められるのかなどの点が大きな関心事となっている。
このような背景から、本稿では、既存の議論の概観を中心の作業としながら、日本企業の知財戦略経営の今後にも触れてみた。
米国企業を前提とした議論では、大企業に残る機能はシステムインテグレーションを中心とした機能になるという見解もあるが、一方、日本企業の経営スタイルは、米国企業と異なり、蓄積の経済であることから、その純度を高めるため、日本企業はコア技術を明確に設定し、その分野に「集中投資」を行い、ノンコア技術の部分を中心にオープンな調達を進めていくことが最もオーソドックスな対応となると考えられた。しかし、もっと積極的に捉えれば、日本企業のイノベーションにおける「内向き」「閉鎖的」という課題が、(外部のイノベーション情報にアクセスできにくかったことも理由だと考えると)、チェスブロウのいう、新しいイノベーション仲介業者が登場し、イノベーションの仲介が一般的になっていけば、むしろこれを克服できる可能性も考えられ、これまでの閉鎖的なイノベーションの強みを維持しながら、オープンな調達のメリットも享受できる可能性が開けてきたと考えていくべきなのかもしれない。日本企業の戦略的対応が期待される。

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