地域ICT政策の総括と展望

2010/01/01 西尾 真治
ICT

ICT(情報通信技術)政策は、国家の競争力を左右する重要な政策分野となっている。IT戦略本部によるe-Japan戦略をはじめとする取組みが一定の効果をあげ、地域では、行政コスト削減の手段、行財政改革や地域経済の活性化の切り札、地域のコミュニケーションツールとしての期待が高まっている。
地域ICT政策1は、ICTの発展に応じて4段階に整理できる。第一段階(60~70年代)は、汎用コンピュータによる庁内事務の電算化が進んだ段階である。第二段階(80~90年代)は、パソコンとLANの整備が広がる一方で、ICTをまちづくりに生かす地域情報化が登場。各省庁が競ってモデル事業を展開し、ニューメディア・ブーム等を生んだ段階である。第三段階(2000年代)は、インターネットが普及し、国家戦略としての取り組みがスタート。「電子自治体」の概念が登場し、行政情報化と地域情報化の融合が進んだ段階である。第4段階(2010年代)は、クラウド・コンピューティングの登場や政権交代といった転機が重なり、新たな政策の方向性が模索される段階である。
こうした段階を経て、地域ICT政策は、ブロードバンド整備等で効果があったが、オンライン利用率など利活用面で遅れがみられる。また、行財政改革につながっていないことや計画のマネジメントが不十分なこと、行政サービスやシステム共同利用等で地域差が大きいこと等の課題が残り、地域活性化に向けた本格的な活用はこれからである。
今後の地域ICT政策の方向性は、①地域で自律的にICT政策をマネジメントする「地域ICT戦略」の必要性、②CIOへの権限付与・PMO整備と、行財政改革プランと地域ICT戦略の連動による改革の実効化、③ICTを地域企業の生産性向上や経済成長につなげる経済政策の視点、④クラウド等新技術の積極的な活用、などが重要となる。

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