アベノミクスでは強くならない日本経済

2013/08/02 鈴木 明彦
国内マクロ経済

6年ぶりに帰ってきたアベノミクスに日本経済の閉塞感を打ち破ってほしいとの 期待が高まっている。たしかに、円安と株高が進んで人々のマインドも大きく変わ ったようだ。アベノミクスは、経常収支黒字の縮小を背景にすでに円高の流れが変 わろうとしているところに登場し、「大胆な金融緩和」と「機動的な財政政策」と いう一の矢、二の矢を放って円安・株高の流れを一気に加速した。

しかし、円安が進んで物価が上がり始めたとして、それで日本経済が活力を取り 戻すわけではない。少子高齢化、世界経済の成長力低下、新興国の追い上げ、資源 価格の高騰といった日本経済が直面する問題は依然として残っているからだ。また、 「民間投資を喚起する成長戦略」という三の矢が放たれたとしても、それで日本経 済の潜在成長力が高まるとは考えにくい。

円安と株高にほっと一息ついているようでは日本経済は強くならない。円安が多少進んでも追い上げてきた 新興国企業との戦いは苦しいままだ。新たな成長分野に挑戦していかなければ経済は成長しない。人口の減少、 エネルギー供給に対する不安、厳しい環境規制等企業を取り巻く環境は厳しいが、そうした逆境の中にこそビ ジネスチャンスが潜んでいるという発想の転換が必要ではないか。

新しい分野に挑戦することはリスクをともなうが、挑戦しなければこれまでと同じ土俵で薄利多売競争を続 けていかなければならない。政府が行うべきことは、民間企業が競争し成長するのに適した環境を整えること だ。積極的に挑戦する企業が増えてきてはじめて、日本経済は強くなってくる。

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  • 鈴木 明彦

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