景気は「気」の字が大事と言われるが、「景」の字も大事だ。景気とは経済の風景のことだ。景気の上り坂(回復)と下り坂(後退)が繰り返される風景であり、回復や後退の勢いが坂の傾きに表れてくる。2つの坂をつなぐ転換点が景気の山・谷であり、転換点を過ぎると景色はガラッと変わる。
景気に敏感な経済指標のグラフを眺めていると、こうした景気の動きが見えてくる。政府・日銀は「景気は緩やかに回復」という判断を続けているが、実際には消費増税があった2014年の春を境に景気の回復が止まり、下り坂が始まったのではないか。消費増税後の個人消費や住宅投資の落ち込みが景気後退のきっかけとなると同時に、輸出や生産にかつてのような景気をけん引する力がなくなっていることが回復を難しくしている。
景気は回復してない。輸出による成長メカニズムが働かない。となると、先行きの風景は暗い。中国をはじめとした世界経済の減速懸念が出て、株価が不安定な動きをしていることも、悲観ムードを強める。しかし、景気が永久に下を向いたままということはない。来年まで見ればどこかで景気は上向いてくるはずだ。世界経済の再加速がそのきっかけとなるのではないか。
もっとも、ただ待っているだけでは回復のチャンスを逃してしまうかもしれない。景気の「気」の字もやはり大事だ。アベノミクスに期待するのではなく、個々の企業の間に、自ら新しい成長のチャンスをとらえようとする前向きな動きが広がってくることが、日本経済の先行きの風景を明るくしていくだろう。
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