TPPの概要と日本経済への影響

2016/08/09 中田 一良
経済
貿易
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WTO(World Trade Organization、世界貿易機関)のドーハ・ラウンド交渉が行き詰まり、世界全体としての貿易自由化が停滞する中、各国はFTA(FreeTrade Agreement、自由貿易協定)の締結を積極的に進めている。近年は特に「メガFTA」と言われる、多数の国が参加する経済規模が大きなFTAの交渉が注目を集めている。

2016年2月に署名されたTPP(Trans-Pacific Partnership、環太平洋パートナーシップ)は、メガFTAの代表的なものであり、関税の原則撤廃という高い水準での貿易自由化と貿易・投資に関するルールづくりを特徴とする、21世紀型の経済連携協定とよばれる。TPPの交渉分野は広範囲にわたり、その目指すところは、関税の撤廃等を通じて、域内におけるモノ、人、資本、情報の国境を越える動きを可能な限り円滑にして、域内の競争条件をできるだけ平等なものとすることにあると言える。そして、競争の促進を通じて、生産性を引き上げ、経済成長へとつなげようとしていると考えることができる。

TPPが日本経済に与える影響としては、貿易の活発化や税関手続きの効率化等を通じて、実質GDPを長期的に押し上げる一方、農業では安価な輸入品の増加により生産額が減少すると見込まれている。

政府は、TPPの大筋合意を受けて「総合的なTPP関連政策大綱」をまとめた。農林水産関連分野の施策のほか、TPPの活用の推進に向けて、中堅・中小企業への情報提供や相談体制等の整備といった支援策が盛り込まれている。今後は、こうした取り組みを、企業のニーズに応える形で効果的に推進していくことが課題となる。そうした中、TPPに期待される効果がもたらされるかは、企業がTPPを活用して企業業績の拡大へとつなげることができるかにかかっていると言える。

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