日本経済はいざなぎ景気を超える長期回復が続いていると言われているが、その回復力は弱く実際には定常状態が続いている。こうした状況を、付加価値経済に移行しているという認識に立って考えてみた。
付加価値経済とは、高度成長期のように数量の拡大が経済成長をけん引するのではなく、価値を拡大させることによって経済が成長していくというものだ。70年代初めに高度成長が終わり、国内や海外の需要を前提にした輸出、生産の数量拡大は難しくなってきた。バブル崩壊やリーマンショックを経た後は、量の拡大が一層難しくなり、価値を高めることに成長の源泉が求められようになった。
付加価値経済においては、数量の拡大を期待しにくく成長率は低い。一方、価値の向上は安定的に行うものであり、経済に底堅さが出てくる。景気が過熱することはなく物価は安定している。また、企業経営においては売上よりも利益の拡大に重点が置かれるため、利益が増えたからといって設備投資や賃金が増えるとは限らない。結果として利益と景気のかい離が生じてくる。
研究開発に力を入れ、専門性のある人材を集めながら価値を拡大することが、付加価値経済の成長をもたらす。バブル崩壊など経済危機に直面した日本では人件費や設備投資を抑えることが先行したが、付加価値経済の本来の姿に近づいてきている。成長力を高めるためには、付加価値を増やすだけではなく新しい価値を創造することが求められる。そのためには、価値創造のフロントランナーにふさわしい人材を集めるだけではなく、業績を正当に評価して利益を配分していくといった発想の転換が必要となろう。
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