高齢者医療と介護

2007/06/04 星芝 由美子
介護

2000年に介護保険制度が開始され7年がたった。団塊の世代が介護を必要とする時代を前に、医療制度改革が進められ、介護保険制度も見直しがされている。ここでは、高齢者医療・介護における最近の注目点を挙げてみる。

療養病床再編(1)-病院・診療所の決断

今、1番ホットなテーマは『療養病床再編』だろう。慢性期の患者の入院施設である療養病床には医療保険適用病床と介護保険適用病床がある。このうち『介護保険適用病床』は平成23年度末で廃止されることになった。それでは全ての療養病床が医療保険適用となるのかといえばそうはならない。療養病床を有する病院・診療所は5年後までに医療保険適用として存続か、転換・廃止の決断を迫られ、厚生労働省は、現在、約37万床ある療養病床が23年度末には15万床になると見込む。

療養病床再編(2)-地域・利用者の立場

介護保険適用療養病床の廃止は、地域にとっては高齢者の入院施設が大幅に減少することを意味する。地域の療養病床がなんらかの介護保険施設に転換し、在宅維持が難しい高齢者の入所の受け皿をある程度確保できるのか、あるいは療養病床を有していた病院・診療所は病床を持たないサービス拠点となるのか、地域内のサービス形態は大きく異なってくる。療養病床再編は、単に医療機関だけの問題ではなく、地域自治体としても対応が求められる課題である。

看取り-診療所医師の対応

現在は病院で亡くなる人が圧倒的に多いが、痛みや苦しみがない状態で住みなれた自宅で亡くなりたいと思っている人も多い。前述のように病床数の大幅削減が予定される中、24時間連絡可能な体制をとり、往診等を行なう『在宅療養支援診療所』が創設された。通常、診療所が在宅看取りを行なう場合の報酬は1回につき1万2千円であるが、在宅療養支援診療所の場合は10万円が支払われる。地域の医師に対する期待が報酬で示され、これに応える医師が増えている。

訪問リハビリテーションの普及

病院や施設から退院・退所した直後に、理学療法士や作業療法士による短期・集中的な訪問を受けることは、再入院・再入所を回避し在宅生活を継続するために非常に効果的であるといわれる。というのも、これらリハビリテーションの専門家は、本人の機能の回復を促すだけでなく、在宅環境を整えることも含め、環境適応を支援するプロであるからだ。しかし、地域内の供給量不足や直接的な介護負担軽減ニーズのために、リハビリテーションよりもヘルパーの利用が優先されることも多いという。リハビリテーションについての理解・普及が課題とされる。

以上見てきたように、今後、介護を必要とする高齢者がさらに増加する中、寝たきりを予防し、QOL(クオリティーオブライフ)の向上を図るために、(高齢者)医療資源の再構築が進んでいる。医療施設(療養病床)の役割を見直すことで在宅復帰を促し、普及が進んだ各種介護サービスに加えリハビリテーションが在宅生活維持を支援し、最期には診療所医師が看取りまで支援することで在宅介護の質がより向上することが期待される。

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