PPPによる地域経営の現場から

2007/07/02 岩田 雄三
PPP
自治体経営
官民協働
地域経済

公共事業の効率性を高める努力と同時に、地域、民間とのパートナーシップのあり方を再構築する動きが高まるなか、PPP(Public Private Partnership)=「官民のパートナーシップ」は、行政運営、地域経営を考える上で重要な枠組みとなっている。PPPの一手法である PFI(Private Finance Initiative)や指定管理者制度が導入され、公共事業への民間活力の導入、官民パートナーシップの枠組みが定着しつつある。

業務委託、PFI、指定管理者制度といったPPP手法の導入目的は、一義的には、民間の資金やノウハウを活用することにより、財政負担の縮減と公共 サービス水準を向上することである。すなわち、PFIの基本概念であるVFM(Value For Money)を導出することであるが、先行事例の入札結果や導入事業の運営状況から、その目的は達成されているといえる。
加えて、最近では、公共事業のサービス領域やVFMの導出を超えて、地域経済の活性化や地域価値の創造など、官民パートナーシップによる地域協働や地域再生といった事業組成が求められる機会が多くある。具体的には、公共施設と民間収益施設との合築による賑わい創出や、民間施設等による行政資産の有効活用などである。これに関連して、従来公共や公益的主体に対して、又はPFI事業において認められていた行政財産の貸付けが、地方自治法の改正(平成18年法律 第53号)により、民間に対して任意事業においても可能となった。法整備により事業手法の選択肢が増え、参考とすべき事例も多く存在するなか、PPPの導入により地域再生が図られることが期待される。

こういった地域再生が期待される地域は、中心市街地の空洞化問題を抱えるなど、採算性に乏しい地域や事業である場合が多い。PPPを導入したものの、万が一民間収益施設や事業が破綻してしまった場合に、そのリスクを誰が負担するかが事業組成の争点となる。公共事業や公益的事業である以上、安定的・継続的な事業運営が求められるため、基本的には行政がリスクを負担することが基本であり、結果的には住民がリスクを負担することになる。こういった事業においては、官民のリスク分担や、貸付料の低減などの公共による経済的給付など、地域や事業に応じた官民のパートナーシップのあり方に基づいた事業組成が必要となる。一方で、民間収益施設は賑わい、事業は成功したものの、地元商店街や地域が地盤沈下しては、中心市街地活性化の問題解決や地域協働などPPPの目的は達成されない。PPPを導入するに当たっては、相反する利益をいかに調整し、住民、公共、地域経済、民間等、事業に関与する全ての主体間でWin-Winの関係を成立させることが肝要である。
PPPの導入による地域再生に対する期待が高まっているが、PPPはいってみれば単なるツールである。また、住民を含めどの主体にとっても、インセンティブとリスクはトレード・オフの関係にある。事業手法ありきではなく、地域にとって何がBest Valueかを見出すことが地域経営の端緒であると感ずる。

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