12月20日、農林水産省は、品目横断的経営安定対策(以下、品目横断)の見直し策を決めて、自民党の了承を得た。参議院選の惨敗もあり、制度開始から1年での見直しとなった。今回の見直しは、原則個人・法人4ha以上、(北海道は10ha以上)、集落営農20haという規模要件に満たなくても、市町村が担い手と認めれば対象とできる特認制度を盛り込んだことが特徴となっており、特に中山間地域などへ配慮したものとなっている。
品目横断は、米、麦、大豆、てん菜、でん粉原料用ばれいしょを対象として平成18年より一部開始され、平成19年には本格的に導入された制度である。これまでの経営対策は、米や麦を生産している農家全てについて、生産量あたりで助成が行われていた。しかし、WTO交渉などを通して、これら生産刺激的な補助制度が問題となったこともあり、その方法が大きく変わったものである。品目横断がこれまでの助成制度と大きく違うのは、一定の条件を揃えた地域農業の「担い手」のみを対象としたことと、米、麦といった品目毎に助成するのではなく、経営そのものに対して助成するという考え方になった点である。
この1年での実施状況を確認すると、平成19年度実績では、作付面積ベースでみて米では26%と低いが、4麦(小麦、二条大麦、六条大麦、裸麦)で96%、大豆で80%が対象となるなど非常に高くなっている。もともと麦、大豆は生産組合などを設立して組織化して生産している場合が多いことから、制度導入前からカバー率は高くなると予想されていた。一方で、制度導入前には、カバー率50%と想定されていた米の実績は、予想以上に低くなっていると言える。特に、関東地方、近畿地方、四国地方などは低い都道府県が多い。これらの地域でカバー率が低いのは、品目横断の受け皿となりえる担い手や集落営農が育っていないためであると考えられる。
今回の見直しにより、特に中山間地域などにおけるカバー率の向上が見込まれるが、本来の政策目標である、我が国農業の強化という観点からは、大規模な担い手、集落営農等を育成して、制度の対象を増加させていく取り組みが求められる。例えば、下図は、県別のほ場整備率と米のカバー率との関係を示したものであるが、両者には強い正の相関があることがわかる。このように、ほ場整備事業等のハード事業等も併せて実施しながら、担い手、集落営農等を育成して行くことが必要であると考えられる。
図 ほ場整備率と米のカバー率
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