好調な名古屋経済の維持に求められるブランド力

2008/03/10 佐々木 雅一
東海
文化
経済

当社は、東京、大阪、名古屋のメガロポリスに拠点を置く唯一のシンクタンクである。今回は、ローカルな話題としてナゴヤを取り上げたい。なお、ここでいうナゴヤは愛知県名古屋市を指すのではなく、名古屋市を中心とした生活圏全体をイメージしている。

ナゴヤと聞いて何を連想できるでしょうか?
地元ではナゴヤを表現する際に「日本一元気な経済」と修飾されることが多い。トヨタ自動車に代表される好調なものづくり産業と名古屋摩天楼とも言われる高層ビルの相次ぐ建設がゆえんだ。昨年は、中日ドラゴンズの日本一があった。この他、ナゴヤと聞いて多くの人が連想できるものは、名古屋城、赤味噌、派手な結婚式。近年のご当地グルメブームによって、きしめん、味噌煮込み、ひつまぶし、手羽先、味噌かつといった名古屋グルメの認知度は高まった。しかし、これ以上を連想できる人は、それほどいないであろう。
当社が関わったアンケート調査において、ナゴヤのイメージで地元と全国で最もギャップの生じたものは「暮らしやすさ」に関する認識であった。ナゴヤでは多くの自治体が「暮らしやすさ」をまちづくりのウリとしており、東京や大阪などから移転した企業でもナゴヤの「暮らしやすさ」を評価する声をよく聞く。一方で、ブランド総合研究所による「地域ブランド調査2007」によると、「名古屋市」は居住意欲度で第21位であり、横浜市、神戸市、京都市、札幌市、福岡市、仙台市など他の政令指定都市に遠く及ばない。また、企業での就職において、ナゴヤが配属先になることを嫌うという声も聞く。このように地元と全国で認識が大きく異なるのは、ナゴヤに対する認知度が低いためであると考える。
ナゴヤは東京や大阪と並んで三大都市と呼ばれる。しかし、東京や大阪と異なり民法放送局のキー局・準キー局がなく、三大新聞社の創刊の地でもない。そのため、ナゴヤ発の情報量は東京や大阪に大きく水を空けられている。さらには、東京と大阪の中間に位置するために、両都市の間に埋没し、むしろ札幌や福岡などに注目が集まる傾向がある。例えば、googleでキーワード検索してみると、「名古屋」のヒット数は「東京」の1/4、「大阪」の2/5にとどまり、また、「京都」や「福岡」、「横浜」よりも下、「神戸」や「札幌」と同水準である。また、ものづくり上手なナゴヤは商売下手とも言われることも影響しているであろう。
情報発信力が弱いがために、ナゴヤでは東京や大阪と同様な暮らしぶりがなされる印象がある一方で、東京や大阪ほどの都市的なエンターテイメント性が弱いため、居住地としての魅力が低いようである。ここで、全国的に知られていないであろう、ナゴヤが「暮らしやすい」理由の一例を紹介したい。

(暮らし)

  • 地価が安く、持ち家一戸建てを購入しやすい(国土交通省・水資源局地価調査課による住宅地の圏域別の平均地価は、東京の半分、大阪の2/3)
  • 名古屋駅から電車で数分も移動すれば田園風景が広がる
  • 通勤電車があまり混雑していない、電車を選べば座って通勤できる
  • 自家用車を2台以上所有するのは一般的、マイカー通勤も多く、日常の移動は自動車
  • 週末には自動車を利用してショッピングモールでお買い物

(ビジネス)

  • 知名度は低いが、世界で独占的なシェアを誇る素材・部品を生産する企業が多数
  • 愛知県の有効求人倍率は1.81(平成19年12月)で全国トップ

これらは東京や大阪と異なる点であり、ナゴヤの魅力として差別化できる点である。
経済が好調なナゴヤであるが、有効求人倍率について業種別に見ると、専門・技術職が約3倍、生産工程・労務職も約2倍に達している。ナゴヤ経済をけん引しているものづくり産業では既に人材不足が深刻であり、これまで以上に外部から人を集めなければならない状況にある。そのためには、先のようなナゴヤのイメージを人を惹き付ける魅力として全国に浸透させることが必要になってきていると思われる。

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