本年4月より後期高齢者医療制度が始まった。本制度は賛否様々であり、政治的にも大きく取り上げられた。ここでは、本制度の中で特に評判がよくなかった「後期高齢者終末期相談料」に関連して、高齢者の在宅看取りを取り巻く医療・介護の現状について述べたい。
後期高齢者終末期相談料について
後期高齢者医療制度開始と同時に新設された後期高齢者終末期相談料は、「保険医が終末期と判断した後期高齢患者について、患者の同意を得た上で、終末期における診療方針などについて双方で十分に話し合い、その内容を文書などにまとめて提供した場合」に算定でき、1回(1人)200点(2,000円)となっている。「診療方針について本人と相談」することを評価するものであり、決して「積極的延命治療中止の決断を促す」ことを意図したものではないが、対象者が75歳以上の後期高齢者に限定されていたこともあり、将来的に、高齢者への積極的医療の抑制につながることが危惧され、混乱を招いた。結果、この診療報酬については、いったん請求・支払いを凍結する、というかつてない取り扱いがなされているところである。
ターミナルケア加算について
実際は、これまでも、より直接的に在宅での看取りを評価する診療報酬が準備されていた。在宅患者訪問診療料におけるターミナルケア加算である。在宅支援診療所や在宅支援病院等が、「死亡日前14日以内に2回以上の往診又は訪問診療を実施し、かつ、死亡前24時間以内に訪問していた場合」には、10,000点(10万円)が算定できる。この加算は平成18年度の診療報酬改定により新設されたが、当時、これこそ病院での終末期医療に対して、在宅死を誘導するものであるという見方もあった。
訪問看護師等に対する評価
保険医療機関の看護師等が在宅等の患者に対して、「死亡日前14日以内に2回以上在宅患者訪問看護・指導を実施し、かつ、訪問看護におけるターミナルケアに係る支援体制について患者及び家族等に対して『説明』した上で、ターミナルケアを行った場合」に、2,000点(2万円)加算される。(注:訪問看護ステーション利用の場合や介護保険利用の場合には、要件・金額が多少異なる。)
このように、医師以外のスタッフ(看護師等)にも終末期の支援が期待され、またその算定要件に「説明」を含んでいる点には、医療の役割が単に処置をすることや病気を治すことだけではないというメッセージがこめられており、この観点からも注目しておきたい。
特別養護老人ホームでの看取り
病院や診療所、訪問看護ステーションといった医療機関以外にも、高齢者の看取りに積極的に取り組む場所がある。介護保険施設である特別養護老人ホームである。常勤の医師がいる特別養護老人ホームは5%程度であり、通常は医師がいない。ここでは、看護・介護職員による高齢者の看取りが行われており、平成18年度の介護報酬改定において看取り介護加算が設けられた(1日160単位(1600円)、30日上限)。在宅に近い環境での看取りは、利用者家族からの満足度が非常に高く、特別養護老人ホームでの看取り数は増加傾向にある。
以上、高齢者の看取りを支援する医療・介護の最近の動きについて整理したが、終末期の対応は、単に医療・介護提供者だけの問題ではない。各人の価値観・人生観が大きく影響するものである。このことを受け止めた関連制度・サービスの準備・充実が期待される。
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