平成の市町村合併による効果が求められている

2009/02/23 佐々木 雅一
自治体
地方自治体

旧合併特例法の改正により国が推進した市町村合併。法改正時の平成11年に3,232あった市町村は、平成20年末に1,782へと4割以上減少した。合併した多くの市町村では、その後概ね3年を経過しており、その効果と課題について整理したい。

市町村合併の動向

当時、平成の市町村合併の最大の目的は、行財政基盤の強化にあった。基礎自治体である市町村では、住民の多様化・専門化する行政ニーズへの対応が求められ、安定した財源や専門性の高い人材の確保が必要であった。しかし、国・地方ともに厳しい財政状況にあり、自治体の規模の拡大によって対応していくことが期待されたのである。
このような背景から、市町村合併は財政状況の比較的豊かで人材に恵まれた東京、大阪、名古屋の三大都市圏周辺では進んでいない。東京都と大阪府で合併した市町村は、それぞれ1か所のみ。愛知県は財政力豊かな都市が背後にある中山間地域の市町村を編入するなどして、市町村数は約3割減少した。一方、市町村数の最も減少したのは広島県であり、86から23へと7割以上減少した。同規模の減少があった都道府県は、広島県のある中国地方をはじめ全国各地に見られ、合併の進捗状況は地域による違いが大きい。
平成の市町村合併による特徴のひとつは、極めて面積の広大な市町村が誕生したことにある。最も広い面積となった岐阜県高山市は、古い町並みで知られ人口9万人余りの県北部の拠点都市であるが、その面積は香川県や大阪府を上回る。また、浜松市、富山市、愛知県豊田市などの都市も、中山間地域を取り込むこととなり、治山治水や過疎対策など新たな行政課題を抱えることとなった。

市町村合併の効果と課題

当社では、中部地域の合併市町村を対象としてアンケート調査を実施した。回答のあった市町村による合併の最大の効果は行政経費の削減・効率化である。市長など行政トップや議員数の削減による効果を指摘する声が多い。次に多いのが、住民の公共施設利用の選択肢増加である。居住地だけでなく、就労や買い物など市域を超えた日常生活圏内で行政サービスを受けられるようになった。大都市近郊では、合併により町が市に格上げされたことによりイメージがアップし、人口増加につながったという声も聞く。
一方で、合併後の最大の課題は、十分に効率化が図られていない、すなわちトップや議員数の削減による人件費削減以外の効果が現れていないことである。平成の市町村合併は、旧合併特例法による国の優遇措置がインセンティブであったが、平成18年3月までを措置期限としていたため、スケジュール最優先で進められた。合併に対する住民等の反対を回避する必要があり、調整に時間を要する行政サービスは旧市町村の制度をそのままに、複数ある庁舎や公共施設の統廃合について合併後の検討課題としてきた市町村が多い。そして、それが今日に至っても検討されていない。行財政基盤の強化という本来の目的に立ち返れば、早急な対応が求められる。

市町村合併の効果を高めるために

今後、合併効果を高めるために優先的に検討すべきことは、庁舎機能の見直し、小中学校・幼稚園・保育園の統廃合などであると考える。
庁舎機能について、例えば、全職員が収まる庁舎がないため各職員が合併前の各庁舎にそのまま配置されているケースが多い。その結果、会議などによる庁舎間移動の負担や決裁に時間を要するなど無駄が生じている。旧来からの庁舎の並存は、何よりも職員、さらには住民の心理的な合併が進まず、効果を生まない要因になっている。
小中学校や幼稚園・保育園は、少子化により子どもの増加が期待されない中で、統廃合の検討は不可避の事項である。
これらは、合併市町村の問題として一括りで考えることはできない。広大な行政面積を有している市町村では、周辺部の旧市町村地区の支所、学校等の廃止は、地域コミュニティの崩壊に関わってくる。効率性向上だけでなくサービス最適化の視点からの検討が求められる。

100年に一度といわれる経済情勢に直面し、行政も財源確保に極めて厳しい状況を迎えた。最適化の視点から行政サービスの見直しに知恵を絞り、市町村合併の効果を高めていくことで、この厳しい局面を乗り切っていくことが期待される。

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