自治体財政は健全だった?

2009/03/30 山本 将利
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自治体財政にイエローカード?

「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」(以下、財政健全化法と記す。)に基づき、平成20年9月末に、平成19年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率が発表された。財政健全化法に基づくこれらの指標の公表に関しては、地方自治体の財政状況に対して、「イエローカード」「レッドカード」を出すという報道がなされた。
これまでの財政再建法制は一般会計等のみが対象であり、その赤字幅が標準財政規模の20%(都道府県は5%)を超えると赤字再建団体に転落することとなっていた。自治体には特別会計や企業会計があり、関連する団体や第三セクターもあるが、これらの赤字については対象外とされてきた。
そのため、民間企業の連結決算に倣って、関連する団体までを対象とした考え方、フローのみではなくストックに関する指標を用いるという観点が用いた指標が検討された。

財政健全化法における各指標の対象範囲

財政状況把握のための指標は?

財政健全化法導入によって、都道府県・市町村は指標の算出を義務づけられたため、自らの財政状況や各指標との比較をホームページ等に掲載するようになり、住民に対して財政情報が公開される動きが加速された。
財政健全化法では、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率という4つの指標に基づいて、早期健全化基準、財政再生基準を超えていないかのチェックが行われた(それぞれの指標に対する会計の範囲は図の通りである)。
また、公営企業(上下水道、公立病院等が該当)に関する資金不足比率について公営企業会計ごとにチェックが行われた。
早期健全化基準以上となった場合には、財政健全化計画の策定が求められている。

健全ではない自治体は少ない?

さて、実際にはどれくらいの自治体が健全ではないとされたのだろうか。
早期健全化基準(イエローカード)については、4つの指標のいずれかにおいて早期健全化基準以上とされたのは40団体(いずれも市町村)であり、平成19年度末の市町村1,793に対して、約2.2%であり、思いのほか少ないと感じられるのではないだろうか。
なお、財政再生基準(レッドカード)については、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率の3つの指標で判断することとなっているが、いずれかの指標で財政再生基準以上であるとされたのは3団体であった。
財政が健全でないとされた自治体が思いのほか少なかったのは、「連結実質赤字比率」をみる範囲は自治体内の会計に留まり、「実質公債費比率」の対象範囲は一部事務組合や広域連合までに留まった。また、地方公社・第三セクターの赤字状況や経営支援への負担については、「将来負担比率」に反映されるが、個別の事情を勘案して指標の計算が可能であったことも、原因であるとみることができる。

指標はあくまでも目安として

早期健全化基準(財政再生基準)の線引きに絶対的な根拠を求めることが難しく、線引きの変更によって、財政が健全でないとされる自治体は多くも少なくもなる。したがって、早期健全化基準をクリアしているかが問題ではない。
まずは、これらの指標を活用しつつ、人口、産業、土地利用の類似した自治体間での比較、同じ都道府県や都市圏内での比較等を行い、自治体の相対的な位置を明らかにしていくことが必要である。これによって、それぞれが住んでいる自治体の状況を把握できるようになる。
今後、数年間のデータを蓄積した段階で、指標作成についての対象範囲や指標に計上する内容についての再検討を行う必要がある。

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