参加者の減少が続くPFI事業その原因とは

2010/11/10 太田 勝久
PFI

平成11年のPFI法の施行から10年余りが経過し、これまでに実施方針が公表された事業(以下「案件」という。)は約370件(平成22年9月末現在)にも及ぶ。案件数は、平成14年度以降しばらく年間40件前後で推移していたものの、ここ2年間は景気の影響もあり減少し、平成21年度はピーク時の約6割の件数である。その傾向は、今年度も続きそうな状況である。
このように案件数が減少する中、PFI事業への参加者数も減少傾向が続いている(下図参照)。公共投資そのものが縮小している環境下においては、大規模事業に関しては本来参加者数が増加すると考えられるが、現状その逆の現象が発生している。これは、参加を阻害する要因がPFI事業の公募そのものにあると考えられる。

具体的には、参加を阻害する要因として想定されるものとして主に次のものがあげられる。

参加を阻害する主な要因

  1. 予定価格が低い(要求水準と予定価格がバランスしない)
  2. 参画に係る時間・費用
  3. 参加資格が厳しく参加可能な企業が限定
  4. 民間への過度なリスク移転・不確実性の高いリスク負担 等
  5. 同時期に同業種の公募

図 PFI事業案件数と応募者数の推移

PFI事業案件数と応募者数の推移

(出所)内閣府「平成21年度 PFIに関する年次報告書」

上記要因はいずれも重要かつ解決しなければならない問題であるが、その中の「(1)予定価格が低い(要求水準と予定価格がバランスしない)」の問題について注目する。これは、平成21年度PFIに関する年次報告(内閣府)にも、民間事業者が参画するにあたり重視している事項の一つとして挙げられている。
そこで本稿では、なぜ要求水準と予定価格がバランスしない事態が起こるのかについて、過去のアドバイザー業務の経験や民間事業者の意見等からその原因を整理・分析し、今後のあり方について検討を行う。

想定される原因

  1. 要求水準書の策定と予定価格の積算の擦り合わせがされていない
    予定価格の積算項目に、要求水準書(事業契約書含む)で規定されている業務内容が全て網羅
    されていない(一部考慮されていない項目がある)。
    要求水準書の内容変更が予定価格の積算に反映されない。
  2. 一律の削減率を控除するのみのVFM検討
    VFM検討において、従来手法の費用に一律の削減率を乗じた費用をPFIの事業費としている。
    各事業固有の条件やPFI固有の条件が考慮されていない。
  3. 民間事業者としての収益性が考慮されていない
    行政側の支払いのみでVFMの検討が行われ、民間事業者の収益性を踏まえた計算が行われていない。
  4. 民間へ移転されているリスク分が考慮されていない
    従来方式と異なり民間事業者へ移転されているリスク分について、金額換算可能な保険料金等の必要経費が考慮されていない。
  5. 可能性調査の段階で算定した金額から変更(増額が)できない
  6. 財政規律維持のために根拠のない予定価格の削減が行われる

1~6の原因については、検討段階で留意することにより解消可能なものである。つまり、PFIアドバイザーが行政に対して、適切な支援業務を行うことにより問題解決できるものがほとんどであり、本件についてアドバイザーの役割は非常に重要である。こうした事態は、アドバイザーのPFI事業に対する認識不足、アドバイザー業務としての経験不足・能力不足や事業固有の特性を無視した画一的な対応等が起因して発生しているものと考えられる。従って、アドバイザー選定の際には、過去案件での支援内容と事業に対する取り組み姿勢を特に重視すべきである。
また、(カ)については、行政側(特に財政部門)のPFI事業の事業費算定方法に対する理解が不足していることが起因していると考えられ、行政側の取り組み姿勢も重要である。
PFI制度をより良いものとし、今後も継続させるためには、参加者となる民間事業者からの意見を率直に受け入れ、従来の方法にとらわれることなく、改善すべき点は改善するという姿勢がまずは必要である。PFI事業は、官民のパートナーシップによって成立する事業であることを、行政及びそれを支援するアドバイザーが改めて認識し、丁寧かつ着実に事業者選定準備に取り組むことが求められている。

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