リオ+20とは?
今を遡ること約20年前の1992年、ブラジルのリオデジャネイロにおいて、地球環境問題を主要テーマとする国連環境開発会議(地球サミット)が開催された。本会議には100カ国を超える国の首脳が参加し、気候変動枠組条約や生物多様性条約といった地球環境問題に対する国際的な取り組みの端緒となる条約が採択された。この歴史的な地球サミットから20年後にあたる2012年、再びリオデジャネイロにて「リオ+20」と称される国連持続可能な開発会議が開催される予定となっている。1992年の地球サミット以降、持続可能な開発と貧困の撲滅に向けた多種多様な取り組みが実施されてきたものの、十分な成果が上がっているとは言えない。グローバリゼーションの進展と途上国の飛躍的な経済成長により世界全体の構造が変化してきたなかで、持続可能な社会の構築に向けた国際的な枠組みをどのように再構築し、実効性のある形にしていくのか、人類の知恵が問われていると言える。
リオ+20の目的は、持続可能な開発に向けた新たな政治合意の確保や、これまでの取り組みに関する進捗状況及び残された課題の評価、新たに現れつつある課題への対処であり、会議のテーマとして、「持続可能な開発及び貧困撲滅の文脈におけるグリーン経済」と「持続可能な開発のための国際枠組み」が設定されている1。
リオ+20のテーマ(1)「グリーン経済」
「グリーン経済(green economy)」は、環境リスクや生態系の希少性を減少させつつ、人間の福祉や社会的衡平性を改善させた経済を意味する。グリーン経済の概念自体は新しいものではないが、2008年に発生した世界的な金融危機以降、各国の関心が高まってきた。例えばアメリカのオバマ政権は、今後10年にわたり再生可能エネルギー分野に1,500億ドル(約12兆円)を集中投資し、500万人の雇用を創出することとしている。また、韓国は2009年に発表したグリーン・ニューディール政策において、2009~2012年の4年間で総額約50兆ウォン(約3.8兆円)に及ぶ予算を計上し、温室効果ガス排出削減やグリーンテクノロジーの開発等を行う予定である。その他、多くの国において、世界的な景気後退への対応や今後の経済発展に向けた財政刺激策・雇用対策として、環境分野への投資が積極的に実施され、経済のグリーン化に向けた取り組みが進んでいる。
国際機関でもグリーン経済に関する検討が実施されている。UNEP(国連環境計画)は、2011年2月に「グリーン経済をめざして:持続可能な開発と貧困の撲滅への道筋」という報告書を公表し、世界のGDPの2%(年間約1.3兆ドル)を環境投資及び主要な10セクター(エネルギー供給業、農業、漁業等)に振り向けることにより、グリーン経済への移行を始動できるとのメッセージを打ち出した2。また、OECD(経済協力開発機構)は2009年よりグリーン成長戦略(green growth strategy)に関する検討を行っており、2011年5月に最終報告を行う予定となっている3。
もはやグリーン経済への移行に関する必要性及び有益性は、各国政府の共通認識となったと言っても過言ではない。今後は、環境分野への投資規模ではなく、その他の関連施策をいかに効果的な形で組み合わせ、経済のグリーン化を進められるかが鍵となるだろう。
リオ+20のテーマ(2)「持続可能な開発のための国際枠組み」
もうひとつのテーマである「持続可能な開発のための国際枠組み」は、これまでに多くの制度的枠組みや多国間協定が構築されてきた一方で、それぞれが断片化していて全体としての統一性や調整に欠けている状況を踏まえ、持続可能な開発における三つの構成要素(経済、社会、環境)それぞれにおけるガバナンスを強化しつつ、各要素の統合に向けた制度的枠組みの発展を目指すものである。環境的側面における具体的なオプションとしては、UNEPの強化、持続可能な開発のためのアンブレラ的組織や世界環境機関といった新組織の設立等が挙げられ、経済社会的側面では、WTO(世界貿易機関)における貿易と環境及び社会発展との関連に関する理解促進に向けた取り組みや、IMF(国際通貨基金)や世界銀行等のプロジェクトに持続可能な開発の視点を組み込む努力の必要性等が挙げられている。
リオ+20に対する我が国の対応
リオ+20に向けて、遅まきながら国内でも準備が開始されつつある。環境省は、行政、企業、NPO、研究者等から構成される国内準備委員会を2011年5月に立ち上げ、年度内に6回の会合と3回のワークショップを開催する予定としている。民間においても、リオ+20に関する政策提言や啓発等の活動を行う非営利ネットワーク「地球サミット2012 Japan」が2010年より活動を開始している4。日本政府としての対応方針の具体化はこれからであるが、リオ+20まで1年強となり、今後各主体における議論や活動が本格化していくものと思われる。
東日本大震災とそれに伴う福島第一原発事故という戦後最大の国難に直面した我が国は、今後エネルギー政策の抜本的見直しを中心とした国家戦略の再構築が求められている状況にある。その検討においては、自然を完全にコントロールすることは不可能であるという認識の上に立ち、気候変動や生物多様性の損失等による人間社会への悪影響を過小評価しない姿勢が重要であろう。自然の脅威と予測不可能性を肌で感じている我が国が、持続可能な未来に向けた大胆な戦略を打 ち出し、リオ+20において世界を牽引する姿を期待したい。
(出典)
1.Objectives and Themes of the United Nations Conference on Sustainable Development, Report of the Secretary-General
2.http://www.unep.org/greeneconomy/Portals/88/documents/ger/GER_summary_en.pdf
3.http://www.oecd.org/document/10/0,3746,en_2649_37465_44076170_1_1_1_37465,00.html
4.http://earthsummit2012.jp/
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