コンビニ交付サービスにみる電子政府の方向性

2012/10/09 白藤 薫
自治体

コンビニ交付サービスとは

インターネットをはじめとする情報通信技術の普及を背景として、電子政府に関わる取り組みが行われるようになって久しい。こうしたなか、民間事業者と連携することで証明書交付サービスを実現した「コンビニ交付サービス」が2010年2月から始まっている。これはコンビニエンスストアに設置されているコピー機で、住民基本台帳カード(住基カード)を用いて自治体の各種証明書を交付するサービスである。本サービスに対応している自治体の住民は、全国に1万以上の店舗があるセブン-イレブンのマルチコピー機で住民票の写しや印鑑登録証明書などを入手することができる。

コンビニ交付サービスの現状と今後の見通し

サービス開始当初は導入している自治体が少ないこともあって、本サービスの利用は伸び悩んでいたが、翌年、導入団体数が多くなるとともに交付枚数は大幅に増え、2012年に入ってからは1万枚を超えるまでになっている。(導入から2011年10月までの証明書交付枚数と導入団体数の推移を下図に示す)
2012年度は政令市(福岡市:8月開始)をはじめとして新たに12団体が加わり、導入団体は累計で56となった(2012年8月現在)。今年度も財団法人地方自治情報センター(LASDEC)で、システム導入経費を助成する支援事業が行われており、本サービスを導入する自治体は増える見込みである。一方、これまで本サービスはセブン-イレブンでしか利用できなかったが、2番手以降のコンビニエンスストアでもコピー機の更新にあわせるかたちでコンビニ交付対応が予定されている。このように、自治体及び提供民間事業者の拡大により、今後もコンビニ交付の利用拡大が見込まれる。

図表 コンビニ交付利用状況
出所:LASDEC資料より作成

コンビニ交付サービスの意義

コンビニ交付サービスについては、(1)民間の端末機器を利用している(2)手続きが標準化されている という2つの点から、自前主義で進められてきた行政サービスを変えるきっかけになるという点で評価したい。
従来のシステム導入では、それぞれの自治体で端末機器が整備されてきた。証明書交付の関係でも自動交付機が公民館等に設置されたが、1台数百万円する自動交付機を数多く設置することはできず、住民の利便性向上の効果は限定的だった。また、自動交付機の価格が高いため、更新もままならないのが現状である。
一方、全国の自治体では証明書交付や施設利用など同じような行政サービスを提供しているが、手続きの仕方などはそれぞれバラバラであり、それにあわせてシステム開発を行うことから高価なシステムになっていた。
スマートフォンをはじめとするモバイル対応やオンライン申請など情報通信を活用して、もっと利便性を高めて欲しいという住民ニーズに応えていくことが迫られている自治体にとって、コンビニ交付は最小のコストで最大の効果を得るアプローチとして一つの方向性を示しているものであり、今後も注目していきたい。

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