○香港でのＳＡＲＳ（重症急性呼吸器症候群）の流行は５月に入って落ちつきをみせた。５月23日にはＷＨＯ（世界保健機関）の渡航自粛勧告が解除され、市民生活は正常に戻りつつある。しかし、ＳＡＲＳの経済への影響は大きく、香港政府は2003年の経済成長率予想を３か月前の3.0％から1.5％へ大幅に引き下げた。

○ＳＡＲＳによる人の交流への影響をみると、近年アジアで起こった緊急事態のなかでは最大級の減少を記録している。他の災害などと違い沈静化したかどうかの確認が難しいため、これからの対応がむしろ重要と考えられる。

○香港の足下の統計をみると、人の交流に関連する指標は５月が最も悪くなりそうで、６月には回復に向うとみられる。他方、貿易・生産関連は、４月の数字は大きく悪化していないが、海外からの受注の動向をみると今後悪化してきそうである。国内需要関連では、買い控えの反動が出てくる可能性があるものの、雇用・所得環境は一段と悪化しており、消費の基調が急に強まることは考えにくい。

○香港政府はＳＡＲＳおよびＳＡＲＳ後対策を打ち出している。ＳＡＲＳ対策は、被害を受けている企業への補償措置が主で、ＳＡＲＳ後対策は海外に対する安全性のアピールが主なものである。ただし、広東省には7000万人以上の人口がおり、香港だけが防疫に成功しても信頼の回復は難しい。広東省との連携強化がカギとなろう。

ＳＡＲＳ禍の香港経済

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