人口減少がもたらす中国経済の「日本化」

2023/11/17 丸山 健太
調査レポート
海外マクロ経済
アジア
中国

1.「日本化」への懸念が高まる中国経済

中国経済は、かつての日本のように経済の長期低迷に陥る「日本化」が懸念されている。「日本化」は、論者により定義が異なるが、日本が1990年代前半のバブル崩壊後に経験した、長期にわたる低成長・低インフレを指していることが多いようである。特に、中国経済は2022年末のゼロコロナ政策撤廃後、V字回復が期待されながらも春先には早くも回復が息切れしたが、その過程でみられた3つの要素が中国経済の「日本化」を連想させた。

第一に、不動産不況がこの間の中国経済を大きく下押しした。不動産価格高騰に対する人々の不満の高まりを受け、2020年夏以降、政府は不動産関連規制を強化し、価格の是正を試みた。その結果、不動産価格自体は小幅に下落したものの、住宅販売は大幅に減少した。不動産不況が景気低迷の主因となっていることは、日本の1990年代のバブル崩壊を想起させやすい。第二に、最近の消費者・企業マインドの悪化である。マインドの悪化は、ゼロコロナ政策撤廃に伴う「リベンジ消費」の早い息切れを招き、企業の設備投資を抑制した点で足元の景気減速の一因である。そして、中国の消費者・企業マインドの悪化は、1990年代以降の日本でみられた社会の閉塞感と似ており、「日本化」の結果ではないかとの指摘もある。第三に、低インフレである。消費者物価は2023年1~10月累計値で前年同期比+0.4%と低水準の伸びが続いているうえ、10月単月では前年同月比-0.2%と前年割れし、中国経済がデフレに陥るとの懸念が高まった。

続きは全文紹介をご覧ください。

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。