うなぎの蒲焼の消費動向~名古屋と大阪にみる消費パターンの違い~

2014/09/26 鈴木 明彦
調査レポート

○90年代半ばからデフレが続く中にあっても、うなぎの蒲焼の価格は2002年~04年を底にして急上昇し、この10年間で価格は2倍になっている。価格の高騰につれて、購入量は大きく減少し、よく買われる一般的な食材から、たまにいただく食材へと変化している。

○もっとも、食材としてのうなぎの蒲焼の定着度は地域によって異なる。地域別にみると東海と近畿が全国の消費をけん引しており、1世帯平均の支出金額をみるとうなぎの購入が少ない北海道や沖縄の3倍となっている。また、年間の支出規模が拮抗している東海と近畿の間でも、土用の丑の日が含まれる7月の消費動向は東海が近畿を大きく上回り、東海のほうが土用の丑の日へのこだわりが強いといった違いが見出せる。

○地域による差は、名古屋と大阪という都市別の比較でも現われてくる。
(1)うなぎの蒲焼の購入単価の上昇は、名古屋において急であり、大阪においては相対的に抑えられている
(2)購入量の減少は、名古屋において大幅であり、大阪においては相対的に抑えられている
(3)購入頻度の低下は、名古屋、大阪ともに進んでいるが、購入頻度の水準は大阪が名古屋を上回っている
(4)土用の丑の日へのこだわりは、名古屋で顕著で、大阪では相対的に抑えられている。

○うなぎの蒲焼は、価格の上昇が続く中で、名古屋においては、比較的高額な特別な日の食材となる一方で、大阪においては一般的な食材という色彩が残っている。結果として、名古屋では価格や景気の変動を受けて支出が変動しやすいが、大阪においてはそうした変動が小さく安定している。

○うなぎ資源が希少になっていることが、うなぎの価格を高騰させ、その消費にも変化をもたらしている。今年9月に、日本、中国、韓国、台湾は、2014~15年の池入れシーズンにおけるニホンウナギの稚魚(シラスウナギ)の池入れ量を前年(2013~14年)実績より2割削減させることで合意した。もっとも、前年が豊漁であったため、そこから2割削減しても大きなインパクトはなさそうだ。しかし、今後もシラスウナギが不漁になる可能性は十分あり、うなぎ価格は高止まりが予想される。これまで続いてきたうなぎの消費の変化や、名古屋や大阪といった地域よる消費パターンの違いはこれからも続く可能性がある。

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