2016/17年インバウンド見通し

2016/08/05 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済

○2015年の訪日外国人数は1974万人(前年比+47.1%)と4年連続で増加し、訪日外国人消費(インバウンド消費)は3兆4771億円(同+71.5%)と過去最高となった。1人あたり消費額(消費単価)も増えており、中国人による「爆買い」が牽引役となった。また、地域別に見ると、訪日外国人は関東と関西に集中しており、それ以外との差は依然として大きいものの、地方にも徐々に足が伸びるようになっている。

○2016年上期(1~6月期)の訪日外国人数は1171万人(前年比+28.2%)、インバウンド消費額は1兆8838億円(同+18.0%)と増加が続いたが、増勢は大きく鈍化した。最大の要因は15年1月に行われた中国人に対するビザ発給要件緩和効果の一巡であるが、それ以外にも、①海外景気の減速、②円高の進展、③中国における行郵税の見直し、④熊本地震などが下押し要因となった。

○2016年下期以降のインバウンドを取り巻く環境にはプラスとマイナスの両面が見込まれる。海外景気の持ち直しや原油価格が低水準で推移することが下支え役となる一方、中国ビザ緩和効果の一巡や円高の進展、中国行郵税の見直しが下押し要因となる。なお、熊本地震の影響は6月時点ですでに和らぎつつあることから、今後は大きな下押し要因とはならないと考えられる。

○2016年の訪日外国人数は2428万人(前年比+23.0%)、17年は2594万人(同+6.8%)へ増加する見通しである。他方、消費単価は円高などを受けて減少し、16年は15万7196円(前年比-10.8%)、17年は14万9621円となるだろう(同-4.8%)。結果的に、インバウンド消費額は16年に3兆8149億円(前年比+9.7%)、17年に3兆8810億円(同+1.7%)と増加するものの、伸び率は大きく縮小することになる。

○2016、17年の訪日外国人数は、関東、中部、関西、いずれの地域においても増加する見通しである。また、消費単価は、円高や中国行郵税見直しの影響を受けて、関東、中部、関西、いずれの地域においても16、17年と減少する見込みである。両者の動きを反映したインバウンド消費額は、関東では16年は増加するものの、17年には消費単価の減少が下押し要因となり減少する見通しである。他方、中部と関西では、消費単価の減少を訪れる外国人の増加が補い、16、17年ともに増加すると見込まれる。

○政府は2020年に訪日外国人4000万人などを目標に掲げているが、期限通りの達成は難しい情勢である。もっとも、目標達成それ自体に意味がある訳ではない。真に重要なのは、訪日外国人が安定的に増えていく環境、つまりはリピーターの確保を中心とした好循環を作り出すことである。足元ですでにその端緒は見られるものの、それを確かなものとしていくためには、多くの観光資源を抱える地方の努力が必要不可欠である。

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