建設業の現状と公共工事の動向 ~建設業の人手不足が供給制約となる可能性~

2019/07/09 中田 一良
調査レポート
海外マクロ経済

○建設業の就業者数は、1997年の685万人をピークに2000年代にかけて減少が続き、2010年以降は約500万人で推移している。他方、建設工事の動向をみると、1990年代前半をピークに2000年代は減少が続いたものの、2010年代に入って増加に転じている。建設需要の回復を受けて、建設業の営業利益は増加傾向にあり、バブル期並みの水準となっている。

○このような中、建設業において経営上の問題となっているのが人手不足である。建設業者を対象とする調査では、建設業の経営上の問題として回答が多い項目(複数回答)は、「受注の減少」、「競争激化」、「人手不足」、「従業員の高齢化」などである。最近は「受注の減少」、「競争激化」と回答する企業の割合は減少傾向にある一方、「人手不足」、「従業員の高齢化」と回答する企業の割合は増加傾向にある。

○建設業の人手不足感は、バブル期ほどではないものの、足もとではかなり強いと考えられる。職種別の雇用不足感をみると、特に専門性の高い職種で強い。建設業で働く外国人労働者は増加しているものの、建設業の就業者全体に占める割合は1.4%に過ぎない。今後の建設需要の動向によるものの、当面は建設業の人手不足の解消は難しいと考えられる。

○政府は、これまで景気対策の一環として公共事業関係費を増加させる政策をとってきた。実際の公共工事の動向をみると、1990年代前半やリーマン・ショック後の2009年には民間工事が減少し、建設業の雇用過剰感が高まった時期に政府が景気対策を実施することで公共工事が増加し、建設需要の減少を緩和できた。

〇政府は2018年12月に、国土強靭化基本計画の見直しを行い、減災・防災、国土強靭化を推進するための3か年緊急対策を決定し、そのための経費を2018年度、2019年度予算に盛り込んだ。政府は2020年度予算において、消費税率引上げの需要変動に対する影響の程度や最新の経済状況を踏まえた上で、臨時・特別の措置を講じるとしており、国土強靭化基本計画を実施するための予算が計上されると考えられる。

○国や地方公共団体の予算の動向をみると、翌年度繰越額の規模がこのところ大きくなっており、建設業における人手不足の中、予算の執行が滞っている可能性がある。こうした中、政府が景気対策として公共事業関係費を増額しても、人手不足が供給制約となり、景気押し上げ効果が抑制される可能性がある。・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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