○ポーランド経済は、2000年代以降、マイナス成長になった年が一度もなく、また、近年の成長率は、EU全体の成長率を上回り、個人消費、投資、輸出がいずれも好調に推移している。個人消費の好調さの背景には、FDI(外国からの直接投資)流入による雇用所得環境改善がある。投資の拡大を後押ししているのは、EU基金を利用したインフラ工事である。輸出の拡大は、ドイツ向けの自動車関連が牽引している。
○好調な景気を背景に、2000年代には20%にも達していた失業率が2018年には3%台まで低下した。この低失業率が示すような雇用所得環境の好転は、個人消費拡大を支える要因になっている。しかし、他方で、低失業率は、人手不足が深刻化していることを示している。外資企業が多数進出している西部や南部を中心に、外資企業が労働力確保に苦慮する事態になっている。
○インフレ率は、原油価格下落等の影響で2014年にマイナスとなり、2017年以降はプラスに戻ったが大きく加速することはなく、インフレターゲットのレンジ内に収まっている。インフレ率が低位安定しているため、中銀は政策金利を1.5%のまま4年以上も据え置いている。この低金利が、景気の押し上げに貢献している。
○景気拡大を背景に、税収増加によって財政赤字が縮小しており、また、公的債務残高の対GDP比率もマーストリヒト基準(60%)よりも低く、財政状態は比較的健全である。 ○通貨ズウォティの対ユーロ為替相場は、2013年以降、強含みで安定しており、しかも、現状の為替レートのもとで景気・物価・経常収支に特段の問題はない。つまり、現時点の為替相場に基づいて通貨をユーロに切り替えても経済面で問題は発生しないと見られる。しかし、ポーランド国内には、自国通貨を保持し金融政策の自主性を維持するのが得策だとの意見が強く、早期のユーロ導入は困難な情勢である。
○ポーランドの輸出は、「自動車」と「ドイツ」という2つの要因によって牽引されている。ポーランドの最大の輸出品目は自動車部品であり、また、最大の輸出先はドイツである。ドイツ向け輸出の中での最大の品目は自動車部品である。
○ポーランドは、人口4,000万人という比較的小さい国でありながら、日系企業拠点数は、東欧・中東・アフリカ地域の中では、ロシア、UAEに次ぐ第3位である。これは、ポーランドが、EU加盟の東欧諸国の中で最大の人口を有し、また、ドイツに隣接し西欧への輸出基地として活用しやすい、という大きな強みを持っていることが日系企業を惹きつけているためと考えられる。
○ポーランドでは、前述のように人手不足が深刻化しているが、労働需給ギャップを補っているのが、主にウクライナ人出稼ぎ労働者を中心とする外国人労働者である。ポーランドで働くウクライナ人は200万人とも言われる。ウクライナ人など外国人労働者の存在が、国内労働需給逼迫を緩和し、人件費上昇圧力を抑えて、インフレ昂進を防ぐのにも貢献していると見られる。
○ポーランド経済は、今後も、FDI流入によって、高度化が進むだろう。労働者不足は、外資企業進出にはマイナス要因であるが、他方で、省力化投資を進めたり、国内産業の高付加価値化を促す側面もあることから、ポーランドの産業高度化を後押しするチャンスにもなるだろう。
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