新型コロナウイルス感染拡大によるインバウンド需要の蒸発が日本経済にもたらすインパクト

2020/04/21 丸山 健太
調査レポート
国内マクロ経済

○新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴い、日本を訪れる外国人の数が激減している。外国人観光客の日本での消費=インバウンド消費の規模は、半導体の輸出額を上回っており、観光業は今や一大「輸出産業」となっている。したがって、インバウンド需要の蒸発は日本経済に大きな打撃を与えることとなる。そこで、産業連関表を用いて、インバウンド需要の蒸発が日本経済にもたらすインパクトについて考察した。

○足元のインバウンド需要の蒸発した状態が半年間続くと、日本の名目GDPは3.0兆円失われる。これは年間の名目GDP約0.6%分の押し下げに相当する。また、それに見合って雇用も失われ、55.7万人の失業者が発生し、完全失業率は0.8%ポイント上昇する。

○インバウンド需要蒸発の影響は、小売や飲食サービス、宿泊業といった労働集約度の高い産業において顕著に表れる。特に宿泊業は、同時に国内需要の減少にも直面しており、本稿での試算よりも大きな生産・雇用の減少に見舞われる可能性がある。

○新型コロナウイルス感染症の収束後に、政府の掲げている「観光先進国」になるという目標を達成するためには、まずは観光に携わる企業が今の危機を乗り切るための支援がなされ、次に収束後に予定している需要喚起策が実効性を伴う形で実施されることが必要である。

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