新型コロナ収束後、観光業のV字回復に必要なこと~心理的な不安感を解消できるかが回復のカギ~

2020/04/24 藤田 隼平
調査レポート
国内マクロ経済

○新型コロナウイルスの感染拡大の防止のために、世界中で人の移動が厳しく制限されている。日本でも、2020年1月下旬以降、訪日外国人が急減していることに加え、感染拡大防止を目的とした政府からの要請もあって、営業自粛や不要不急の外出を控える動きが広がっている。これにより、大きな打撃を被っている産業のひとつが観光業である。

○新型コロナウイルスの感染拡大はこれまで経験したことのない未曽有の事態だが、地震や噴火など自然災害の多い日本では、局所的ではあるものの、これまでも観光需要の急減に見舞われてきた。

○そうした自然災害時と同様に、今回の新型コロナウイルス問題による旅行需要の落ち込みにも2つの要因がある。ひとつは、政府の要請により多くの観光施設が営業を自粛していることや、緊急事態宣言により不要不急の外出を控えるよう要請されていることから、通常どおりの旅行ができないという物理的な制約である。もうひとつが、新型コロナウイルスに感染する不安感等から、安心して旅行を楽しめないという心理的な制約である。

○新型コロナウイルスの感染が収束し、活動制限がなくなれば物理的な制約は基本的に解消されるため、旅行需要も回復へ向かうと期待される。政府も、収束後の回復を促すため、2020年度第1次補正予算案に旅行や外食等のレジャー関連需要の喚起策の予算を計上した。

○もっとも、ウイルスは目に見えないものであるため、東日本大震災後の福島県と同様に不安感の解消に時間が掛かり、心理的な制約が残ってしまうことで収束後もしばらくは旅行需要が抑制される懸念がある。

○政府は大規模な対策を準備しているが、新型コロナウイルス感染症が根絶されない限り、人々の不安感は完全には解消されず、旅行需要の本格回復には至らないとみられる。それまで政府には、旅行代金の助成やプロモーション活動等の支援を粘り強く行っていくことが求められる。

○2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックの扱いも重要である。新型コロナウイルスを克服し、完全な形で開催できるとの対外アピールが、風評被害を払しょくする何よりの特効薬となるだろう。

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