パキスタン経済の現状と今後の展望~ 世界第5位の人口を擁する南アジアの隠れた新興経済大国パキスタン ~

2024/09/30 堀江 正人
調査レポート
海外マクロ経済
アジア
  • パキスタンは、建国時に民主主義政治確立に失敗し政治混乱が続いたため、なかなか経済発展への足掛かりがつかめなかった。隣国インドが経済高成長を謳歌しているのとは対照的に、パキスタンは長らく経済不振が続いてきたが、他方で、世界第5位の人口を擁することから、南アジアの隠れた新興経済大国として注目されている。
  • パキスタンは、周辺国との緊張関係のため地政学的リスクが高いという問題を抱えている。この地政学的リスクの高さゆえに、低所得国にもかかわらず大規模な軍備保持の負担を強いられ、また、投資家からはリスクが高いと警戒されてきた。これが、パキスタンの経済発展を妨げる大きな要因となってきた。
  • パキスタン経済は、ウクライナ戦争後のサプライショックを起点とするインフレ率上昇と、それに対応するための金融引き締めで大きく落ち込んだ。また、輸入物価上昇による外貨準備減少懸念から為替相場も大きく下落した。さらに、2022年6~8月には歴史的な洪水被害が発生し、経済は大打撃を受けた。インフレ率は、2023年5月には38%に達したが、その後低下し、2024年4月以降は10%台で推移している。インフレ鎮静化により、今後の景気回復に期待が持てる状況になってきた。
  • パキスタンの経常収支は慢性的な赤字状態である。輸出産業が未発達なため貿易収支が恒常的な赤字であり、それを、在外パキスタン人労働者からの本国送金である程度オフセットしているが、経常収支トータルでは赤字という構造である。
  • パキスタンは、過去に何度か外貨準備危機に見舞われ、そのたびに国内経済が混乱に陥った。外貨準備の不安定は、パキスタン経済の弱点とも言える。近年では、2022年のウクライナ戦争勃発に起因するコモディティー価格上昇のため外貨準備危機が深刻化し、日系自動車メーカーが現地生産中断に追い込まれるなど大きな影響が出たが、政府はIMFや湾岸諸国からの金融支援を受けて危機を脱した。
  • パキスタンは、生産年齢人口比率が上昇する「人口ボーナス期」が2070年まで続く見込みであり、人件費の低廉さもあって、経済成長の可能性に富んでいる。この強みを活かすべく、FDI(海外からの直接投資)流入を促進し、経済発展に繋げていくことが、新興経済大国として台頭するための重要課題である。

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