インドの経済動向(2021年10~12月期)~ デルタ株ショックから回復したが、景気拡大の勢いは予想外の弱さ ~

2022/03/17 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • インドの2021年10~12月期(2021年度第3四半期)の経済成長率は、前年同期比5.4%と、2021年7~9月期(同6.5%)よりも減速した。需要項目別に見ると、今期の成長は、主に個人消費によって支えられたもので、投資(固定資本形成)は伸び悩んだ。また、産業部門別では、製造業がほぼゼロ成長で、建設業がマイナス成長となるなど、一部セクターの予想外の不調が景気拡大の勢いを削いだ。
  • インドにおけるコロナウィルス新規感染者数は、第一波の感染拡大が2020年9月をピークに減少へ転じた後、2021年3月には変異種デルタ株よる第二波の爆発的な感染拡大が発生した。2021年11月には、南アフリカで新たな変異種オミクロン株が発生、その影響で、インドでも2022年1月に感染が急拡大した。しかし、2月に入ると感染は急速に鎮静化した。
  • 2020年春のコロナ禍発生を受け、中銀は、2020年3月と5月に利下げを実施し景気の下支えを図ったが、インフレ率が上昇しインフレターゲットの上限(6%)を超えた。その後、インフレ率は低下したが、足元では再び6%台まで上昇している。ただ、中銀は、今のところ、金融緩和を維持する意向と見られる。
  • 乗用車の月間販売台数は、コロナショックで激減したが、2020年夏以降持ち直した。2021年5月には、コロナウィルスの第二波感染拡大の影響で急減したが、6月以降は急回復した。しかし、2021年9月は、半導体不足や原材料価格高騰による生産体制縮小の影響もあって減少した。2021年の祝祭シーズン(10~12月)の特需期も、期待を下回る規模にとどまった。
  • 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年春には大幅な落ち込みとなったが、ロックダウン終了後に急回復した。2021年4月には、前年春の落ち込みからの戻りというテクニカルな要因に影響されて、著しく高い伸び率となった。2021年9月以降は、自動車関連業種が、半導体不足や原材料価格などで生産減となった影響を受け、伸びが鈍化した。
  • インドは、財(モノ)の輸出は振るわないが、サービスの輸出は2000年代以降著しく拡大しており、特に、ITをベースとする各種サービスのアウトソーシングでは、世界最大級の輸出国となった。この輸出が、近年、高水準で推移しており、インドの経常赤字拡大を食い止めるのに重要な役割を果たしている。
  • インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という問題を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は他の主要新興国よりも安定している。巨大市場であるインドは、成長ポテンシャルに魅かれて世界中から流入した資本の額が経常赤字をオフセットするパターンが定着、これによってもたらされる国際収支面でのソルベンシー・リスクの低さを背景に、ルピーの相場が安定していると言えるだろう。
  • インドの株価は、2020年春のコロナショック発生時に大きく下落したが、その後、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復し、過去最高値を更新しながら上昇してきた。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さを反映したものと言えよう。ただ、ウクライナ危機による原油価格高騰が、企業収益を悪化させ、今後、インドを含む新興国の株価下落圧力を高める可能性がある点には注意が必要である。

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