インドの経済動向(2022年7~9月期) ~経済成長率は前期よりも減速、原材料価格高騰と利上げで先行きに懸念~

2022/12/14 堀江 正人
アジア景気概況
海外マクロ経済
  • インドの2022年7~9月期(2022年度第2四半期)の経済成長率は、前年同期比6.3%と、2022年4~6月期(同13.5%)よりも大幅に減速した。今期の成長率減速は内需の鈍化が主因であった。内需鈍化は、原材料価格値上がりやインフレ対策としての中銀利上げによる影響と見られる。ただ、新興経済大国BRICsの2022年7~9月期の経済成長率を比較すると、インドが、中国(3.9%)、ロシア(▲4.0%)、ブラジル(3.0%)を上回っており、インド経済がBRICsの中では最も堅調であることが印象付けられた。
  • 中銀は、2022年1月以降のインフレ率急上昇を受け、5月に40bpsの利上げを実施し、さらに、6月にも50bpsの追加利上げを実施した。中銀は、インフレ率がインフレターゲットの上限(6%)を超える状況の長期化を警戒し、8月の金融政策決定会合でも50bpsの利上げを決め、9月の金融政策決定会合でも、米FRBの大幅な利上げに対応することを目的に50bpsの利上げを決めた。その後、12月の金融政策決定会合でもインフレ率を中長期的にターゲットレンジ内に収めるため、35bpsの利上げを決定し、5会合連続の利上げとなった。今後、利上げによる景気下振れリスクに注意が必要だ。
  • 乗用車の月間販売台数は、コロナショック発生直後に激減したが、2020年夏以降持ち直した。2021年5月には、コロナウィルス第2波感染拡大の影響で急減したが、同年6月以降は急回復した。同年9月は、半導体不足や原材料価格高騰による生産体制縮小もあって減少したが、その後回復した。2022年1~3月の販売台数は盛り返す兆候も見えたが、同年4月は若干減少し、その後再び増加したが足元では足踏み状態である。今後は、利上げによるマイナス影響が懸念される。
  • 工業生産指数伸び率は、インド全土で実施されたロックダウンのため、2020年春に大幅に落ち込んだが、ロックダウン終了後に急回復した。2021年4月には、前年春の落ち込みからの戻りというテクニカルな要因に影響されて、著しく高い伸び率となった。同年9月以降は、半導体不足や原材料価格高騰などで自動車関連業種が生産減となった影響を受け、伸びが鈍化した。その後、2022年4月には7%台となり、5月は19.6%と大きく加速、6月も12.3%と2桁台の伸び率となった。しかし、7~9月は伸び率が低下し、原材料価格高騰などを背景とする製造業の苦境が反映される形となった。
  • インド通貨ルピーの対米ドル為替相場は、米FRBの利上げや、コモディティ価格上昇などを背景に、足元で史上最安値となっている。ただ、インド経済が、慢性的な財政赤字・経常赤字という問題を抱えているにも拘わらず、ルピーの為替相場は他の主要新興国よりも安定している。巨大市場インドの成長ポテンシャルに魅かれて海外から流入した資本額が経常赤字をオフセットしているため、国際収支面でのソルベンシー・リスクが低く、これを背景に、為替相場が安定していると言えるだろう。
  • インドの株価は、2020年春のコロナショック発生時に大きく下落したが、その後、ロシアやブラジルを上回る勢いで急速に回復し、過去最高値を更新しながら上昇してきた。これは、インドの今後の経済成長に対する投資家の期待感の高さが反映されたものである。ただ、ウクライナ危機によるコモディティ価格高騰が企業収益を悪化させたり、欧米での利上げの動きが加速したりすれば、今後、インドを含む新興国の株価下落圧力が高まる可能性がある点には要注意である。

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