このところインバウンド消費の減速を示す指標が散見される。内閣府「景気ウォッチャー調査」のコメントをみてもインバウンドの減速をあげる声が増えてきているが、端的なのは免税店の売上高だ。日本百貨店協会によると、5月の「免税売上高」は前年比－40.8％の425.6億円と大幅な減少となった。今年3月に22年3月以来の前年比マイナスとなり、そこから3ヵ月連続で前年比2桁の大幅減が続いている（3月－10.7%、4月－26.7%）。

一方、免税店を訪れた購買客数の動向をみると、5月は前年比で減少したものの3月、4月は増加しており（3月＋13.4%、4月＋3.1％、5月－5.4%）、免税店売上高の大幅減は一人あたりの購買単価の減少が要因となっている。一人あたりの購買単価の減少は、インバウンド消費がモノ消費からコト消費に次第にシフトしていることも一因ではあろうが、やはり円高が進んだことが効いている。百貨店免税売上は、高級ブランド品など高額な商品の販売が主力と考えられるが、昨春は円安進展局面ということもあって割安感から売上が増え、今年は逆に円高進展によって割高感から売上が減ったとみられる。実際、免税店売上高と為替レートの関係をみると、近年、強い相関が確認できる。

免税店売上は減っているものの、購買客数が大きく減っているわけではないし、訪日外客数の総数をみても減っているわけではないので、インバウンド消費の潮目が変わったというわけではないだろうが、為替レートがインバウンド消費に与える影響は大きい。インバウンド消費は、「消費」と呼ばれるものの経済統計上は「サービスの輸出」に分類される。その意味では百貨店は輸出企業の一面もあり、製造業同様、為替レートの影響は避けられない。

免税店売上と為替レート（対数値）

今月のグラフ（2025年7月）円高により減少するインバウンド消費

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