日米の関税交渉が合意に至ったことで、消費者や企業のマインドには持ち直しの動きが出てきている。内閣府による2025年9月の消費者態度指数（二人以上の世帯、季節調整値）は、相互関税が発表された4月を底として、米国でトランプ大統領が誕生して以降では最も高い水準まで回復している。また、日銀短観（2025年9月調査）の業況判断DI（大企業・製造業）も2四半期連続で改善している。

もっとも、歴史的に見れば、7月の関税合意後も貿易を取り巻く環境の不透明感は依然として強く、マインドの改善に水を差すリスクがある。そうした貿易を巡る不透明感を定量的に捉えたのが「通商政策不確実性指数」である。これは、国内主要紙から「経済」、「政策」、「不確実性」、「貿易」の4つ全てに言及した記事の登場頻度を指数化したものである。上記の用語への言及が多い月ほど、高い不確実性が数値として示される。

最近の動きを見ると、トランプ氏が大統領選に勝利した2024年11月以降、急速に不確実性が高まったことが分かる。特に相互関税が発表された2025年4月には過去の米国のTPP離脱や米中貿易摩擦時を大きく上回る歴史的な水準にまで高まった。確かに足元では幾分低下しているが、水準は高いままである。世の中的には日米の関税合意で楽観的な見方も出てきているが、貿易の不透明感は根強く、消費や設備投資が抑制されるリスクには引き続き注意を要する。

図表　日本の通商政策不確実性指数の推移

（出所）“Policy Uncertainty in Japan” by Elif C. Arbatli-Saxegaard, Steven J. Davis, Arata Ito, and Naoko Miake を基に当社作成

参考文献

伊藤新「トランプ政権が生み出す貿易政策を巡る多大な不確実性」, RIETI Special Report, 2025年3月24日掲載.
Arbatli-Saxegaard, Elif C., Steven J. Davis, Arata Ito, and Naoko Miake (2022). “Policy Uncertainty in Japan.” Journal of the Japanese and International Economies, 64, 101192.

今月のグラフ（2025年10月）日米合意後も根強い貿易の不透明感

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