【今月の景気判断】
物価高による内需の低迷を背景に、景気は足踏みしている。内需においては、雇用が緩やかに改善し、名目賃金が増加する中で、物価高による実質賃金の低迷の影響に加え、コロナ禍明け後のサービス需要の回復が一巡したことで個人消費は弱含んだ状態が続いていたが、徐々に下げ止まり、足元では横ばい圏で推移している。これに対して企業部門では、業績の改善を反映して景況感は回復傾向にある。また、企業の設備投資意欲は底堅く、価格高によるマイナスの影響や人手不足による供給制約がある中でも横ばいとなっている。外需においては、インバウンド需要は順調に回復しているが、海外経済の減速により輸出は横ばいで推移している。こうした内外需の動きに加え、能登半島地震や一部自動車メーカーの工場稼働停止のマイナスの影響が一巡し、生産には持ち直しの動きがみられる。
今後、景気は緩やかな回復軌道に復帰する見込みである。実質GDP成長率は、4~6月期にはプラスに転じる可能性が高く、その後もプラス基調を維持しよう。個人消費は、コロナ禍明け後の需要回復一巡に加え、実質賃金の減少継続がマイナス要因であるが、春闘での高い賃上げ率が反映され、所得環境が改善するのに合わせて持ち直していこう。さらに、企業の設備投資意欲は底堅く、今後は持ち直し傾向で推移すると期待される。輸出も、自動車生産や世界的な半導体需要の回復を背景に持ち直していこう。ただし、コロナ禍明け後のサービス需要の回復一巡に加え、①世界経済が減速し、輸出が低迷する、②物価上昇を背景とした消費者マインドの悪化、実質購買力の低下によって個人消費が落ち込む、③コスト高による企業業績の悪化が設備投資を抑制する、④人手不足による供給制約に直面する、といった景気下振れ懸念も多く、景気の足踏みが続くリスクは残る。
【今月の景気予報】
【当面の注目材料】
- 経済正常化に向けた動き~コロナ禍の終息・経済社会活動の正常化による景気へのプラス効果の大きさと持続力、日本銀行の金融政策修正の影響
- 個人消費~物価上昇の影響、リベンジ消費の強さと持続性、春闘結果を反映した賃金動向
- 企業部門~コスト高の業績・設備投資への影響、人手不足・2024年問題への対応
- その他~円安によるプラス効果とマイナス効果の大きさ、一部自動車メーカーの生産停止の影響
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