【特別企画/全国 1 万人調査】臨時休校中の子どもの学習状況

2020/05/19 野田 鈴子
1万人調査(第1回)

1. はじめに
2月27日の安倍首相の要請を受け、3月以降、日本国内のほぼ全ての地域で小学校・中学校・高等学校が休校となった。新型コロナウイルスの感染が拡大するにつれ、休校期間も延長され、5月11日時点で全国の学校(幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等)のうち86%が臨時休業となっている 。
こうした中、懸念されているのが子どもたちの学習格差である。休校に伴い、各学校は対応に追われているものの、学校と生徒を双方向で結ぶようなオンライン授業の導入はなかなか広がらず、各家庭に子どもたちの学習のフォローが委ねられているのが現状である。こうした中で、家庭の状況によって子どもの学習状況に差が生じ、ひいては学力の格差につながっていくことが懸念されている。
よって、本稿では、臨時休校中の子どもの学習状況について、経済状況や世帯状況、保護者の在宅状況等による差を分析することで、子どもたちの学習格差の現状を把握し、今後必要とされる支援についての考察を行う。 なお、分析にあたっては、小学生から高校生までの子どもを持つ保護者を対象とする。

2. 臨時休校中の子どもの学習状況
(1)経済状況による差
まず、経済状況による差について確認する。図表1は、昨年度の世帯収入別に、臨時休校中の子どもの学習への取組状況をみたものである。
全体では、「学校から出された課題に取り組んでいる」が87.5%ともっとも回答割合が高く、ほとんどの子どもたちが学校の課題に取り組んでいることがわかる。次いで、「市販の参考書や学習教材を活用している」が26.4%、「通信教育を活用している」が16.7%と続いている。一方、「学校が実施するオンライン授業を受けている」という家庭は11.5%にとどまり、導入が進んでいない状況がみてとれる。
昨年度の世帯収入別にみると、学校からの課題を除くすべての項目で、収入が高い家庭ほど取り組んでいる割合が高い傾向がみられる。経済的にゆとりのある家庭ほど、学習塾やオンライン学習といった外部の資源を取り入れながら、学習を進めている様子がうかがえる。有料のものだけでなく、「無料のオンライン学習コンテンツ等」についても世帯収入による利用率の差がみられるが、これは家庭におけるインターネット環境の差を反映している可能性がある。
また、世帯収入の高い家庭ほど、「学校が実施するオンライン授業を受けている」とする割合が高くなっているが、これはICT環境の整った私立の学校へ通学している子どもが多いことが一つの要因と考えられる。
なお、全体の割合としては低いものの、「学習に取り組んでいない」と回答した割合について、世帯収入が低い家庭ほど高い割合となっている。学校から課題が出されていないのか、出されていても取り組んでいないのかは本データからは判断がつかないが、いずれにしても完全に学習がストップしてしまっている子どもがいることに留意が必要であろう。 ・・・(続きは全文紹介をご覧ください。)

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