花粉症対策の森林整備クラウドファンディングの可能性~アンケート調査を通じた新たな資金調達の考察~

2023/02/17 轟 修
林業

季節性アレルギー性鼻炎(以下 花粉症)の発生源対策としての森林整備を進めるにあたって、その国等による予算は必ずしも潤沢ではない。本稿では私募債の一つであるクラウドファンディング(以下 CF)に着目し、花粉症発生源対策の資金調達手法としての可能性について考察を行った。

具体的には、オンラインアンケートにより、花粉症罹患者の花粉症対策を目的とした森林整備へのCFに対する関心等を調査した。その結果、受益者となる花粉症罹患者の参加(出資)意向が強く、特に症状の重い者ほど、その傾向が強くなることがわかった。

結果概要

本稿では、花粉症発生源対策(森林整備)の資金調達手法として私募債の一つであるCFに着目し、その可能性を検証するためにアンケート調査を行った。

まず花粉症の現状については、以下が明らかとなった。

  • 20歳以上で花粉症に罹患している者は、おおよそ2人に1人。
  • 花粉症の罹患の程度では、罹患の自覚のある者のうち、重症・中等症の自覚がある人が約6割にのぼる。
  • 花粉症の症歴年数では10年を超える者が約6割を占めていた。
  • 現在の各人の花粉症対策は「マスクをする」が最も多く、次いで「薬を飲む」「空気清浄機など使う」「体質改善のため食事等に気をつける」となっていた。
  • 社会全体で注力すべき花粉症対策としては「森林等での発生源対策」「医療対策」が支持されていた。また花粉症患者の方が森林等での発生源対策をより強く支持する傾向にあった。
  • 現状での花粉症対策に使う年間の費用は、1,000円未満が最も多く、平均は4,084円であった。また罹患の程度別では症状が重いほど高額となっていた。

これまでのクラウドファンディング(CF)の参加状況は以下のとおりであった。

  • これまでのCFへの参加(出資)経験は、「参加(出資)したことがある」が6.4%、「CFは知っているが、参加(出資)したことはない(70.1%)」「CFを知らない(23.6%)」であった。
  • 参加経験のある者の出資額の平均は10,523円であった。

花粉症対策として森林整備を目的とするCFについては以下の傾向にあった。

  • 発生源対策として森林整備を行うCFに対して、約12%が「参加(出資)を考えたい」としていた。
  • 花粉症に罹患している者の方が、また花粉症の症状の重い者の方が参加(出資)に肯定的な傾向にあった。
  • これまでに何らかのCFへの参加(出資)経験者も肯定的な傾向にあった。

以上の結果、調査対象者のこれまでのCFへの参加率(6.4%)と、今回の森林整備CFへの参加率(11.7%)とを考えると、花粉症発生源対策の資金調達としての森林整備CFの導入は検討の余地を有している。

また調査結果からは、今後、森林整備CFを成立させていくために働きかけるべき層(ターゲット層)として「花粉症罹患者(特に重症や中等症)」「一度でもCFに参加したことがある人」がふさわしいと考える。

また、あくまで概算にはなるが、全国で20歳以上の花粉症罹患者は約5千万人となり、それらが各自の花粉症対策として一人当たり4千円を支払っているとすれば、単純には花粉症対策の市場規模は約2,000億円となる。さらに花粉症患者の1割(500万人)がCFに少なくとも1,000円程度を参加(出資)すると仮定すれば森林整備CFでの資金調達額の目安は、約50億円と見込まれる。

続きは全文紹介をご覧ください。

執筆者

facebook x In

テーマ・タグから見つける

テーマを選択いただくと、該当するタグが表示され、レポート・コラムを絞り込むことができます。