諸外国における外国人住民向け統合プログラムの事例研究韓国「社会統合プログラム」の事例をもとに

2023/08/25 加藤 真
雇用
雇用・労働政策
外国人
多文化
韓国

本稿では、諸外国で外国人住民向けに行われている当該国の言語や社会・文化・歴史等を教える統合プログラムの事例研究として、これまで日本語文献ではほとんど扱われてこなかった、韓国における「社会統合プログラム」について、制度詳細や教育内容、参加実態、本プログラムに対する韓国内で挙げられている論点・課題等を整理する。

【要旨】

外国人住民向け統合プログラムが必要とされる背景

  • 日本の在留外国人は307.5万人と過去最高を記録し、将来的には今の欧州並みに匹敵する人口の約1割が外国人となる推計が出されている。外国人を受け入れた後の統合政策(多文化共生政策)に関わり、諸外国では、国として当該国の公用語や社会・文化等を包括的に外国人に学んでもらう統合プログラムが実施されている。日本でも外国人住民の増加が見込まれるなか、本格的な統合プログラム導入に向けた検討が必要な時期といえる。

韓国「社会統合プログラム」の制度設計、運営実態

  • 韓国の社会統合プログラムは、出入国管理法や在韓外国人処遇基本法等に基づき、2010年から本運用が開始された。2020年時点で約10.2億円の国家予算が割かれている。プログラムは全6段階から構成され、0-4段階目の「韓国語と韓国文化」(計415時間)、5段階目の「韓国社会理解」(100時間)が設定されている。
  • 受講自体は任意だが、履修完了により永住や帰化申請、在留資格の変更、留学生のアルバイト許可等で優遇措置を与える制度設計がなされており、受講誘導策が敷かれている。
  • プログラムは法務部に指定された全国約380機関にて共通のプログラムが開講され、毎年5万人前後が受講している。参加者の内訳をみると、帰国が前提とされ家族帯同も認められない低熟練労働者が一定割合を占めている。これは前述の、プログラム受講によるインセンティブ設計がなされていることが影響している。実際、韓国語能力や韓国社会の理解を高め、永住申請や家族呼び寄せができる在留資格へ変更する事例がみられる。

韓国「社会統合プログラム」の論点・課題

  • 主な論点・課題として、社会統合プログラム受講の義務化と有料化が挙げられている。
  • 義務化について、現在は任意であるため参加率が低位にとどまっている。例えば、低熟練の外国人労働者は韓国生活への適応が難しいほど、職務遂行に否定的な影響を与え、事業所離脱(失踪)等を招き、社会的コストが増加するという先行研究もあり、特に低熟練の外国人労働者については受講を義務化し、製造現場や農場等、就労現場に即したカリキュラム及び教材を開発する提案がなされている。
  • 有料化について、現在は教材費のみ参加者負担で、それ以外は公費で賄われている。自費でないため授業参加態度の悪化、出席率の低下などの課題が挙げられている。また、評価試験において不合格だった場合の再履修も無償で行われているため、試験不合格後の再履修時の自己負担金の導入等が提案されてきた。これを受け、直近2023年8月9日に、2024年以降の再履修時の有料化の試行実施が決定された。

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