栄養不良の二重負荷

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栄養不良の二重負荷とは、過栄養(肥満や食品に関連した生活習慣病など)と低栄養(痩せ、拒食、発達障害など)が、同一国ないし同一地区で混在していることを指し、一人の人生の中で過栄養と低栄養の時期が存在することも含まれる。栄養障害の二重負荷ともいう。
世界保健機関(WHO)では “Double Burden of Malnutrition (DBM)”と定義している。

新興国(低所得国)では、経済発展に伴い都市部において過栄養が増加する一方で、地方においては食品流通量が思うように増えず、低栄養が依然として多く見られる。過栄養・低栄養は共に疾病を誘発し、国民の健康被害や労働生産性を低下させることから、グローバルな問題となっている。
また、栄養不良の二重負荷は新興国だけの問題ではない。例えば日本では、動物性脂肪や動物性タンパク質の摂取量の増大に伴う生活習慣病が問題視される一方で、高齢者を中心にタンパク質摂取量が減少傾向にあり、フレイル(虚弱)を誘発しているとされる。

栄養不良の二重負荷は、2021年に開催された東京栄養サミットにおいて初めて取り上げられ、栄養改善に向けて「東京栄養宣言」が発出されている。また、2022年には産学官などの連携による「健康的で持続可能な食環境戦略イニシアチブ」が立ち上がり、栄養課題の達成と食の環境づくりに取り組んでいる。

(羽生 直人)