物理的リスク

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気候変動が企業経営や投資に与えるリスクのうち、ハリケーンや豪雨、土砂災害、水不足、海面上昇などで物理的に被害をもたらすものを指す。

物理的リスクは、主に「急性リスク」と「慢性リスク」に分類することができる。急性リスクとして、突発的な気象災害の増加により被害が発生するものが挙げられる。突発的な気象災害が経済に与える影響には、干ばつによる作物の不作、洪水による物流・サプライチェーンに関する設備や工場の水没などが含まれる。慢性リスクは、異常気象が長期的に続くことにより被害が発生するものである。長期的に続く異常気象には、気温上昇による作物の不作の常態化、海面上昇による海岸付近の設備や工場の水没などが含まれる。

物理的リスクが企業経営や投資に影響を与えた例として、トヨタ自動車の例が挙げられる。2011年に発生したタイにおける洪水により、国内部品産業のサプライチェーンが寸断され、同社現地法人は稼働停止を余儀なくされた。さらに、タイからの輸出部品が関係するタイ国外の生産拠点での生産台数引き下げにも影響が及んだ。気象災害が生産活動に大きな影響を与えた件を踏まえ、現在では、同社発行の環境レポート「Sustainability Data Book」内に、自然災害の頻発化・激甚化によるサプライチェーン寸断に関するリスク分析を盛り込んでいる。