GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)に関する サーベイ結果【2023年度】について~「攻めのガバナンスとGRC領域におけるDX」が重要に~

2024/01/11

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:池田 雅一)は、2023年7月に「GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)に関するサーベイ」を実施しました。このほど調査結果を取りまとめましたのでお知らせいたします。

1.調査趣旨と結果概要

(1) 調査趣旨

本サーベイは、さまざまなステークホルダーにおいてGRC領域全般に対する関心が高まっていることを踏まえ、コーポレートガバナンス・コードにおいて重視されているガバナンス態勢やリスク・コンプライアンス管理態勢の整備状況について、企業の取り組み実態を把握することを目的に、2021年度より継続的に実施しています()。
2023年3月に東京証券取引所より「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応等に関するお願い」が発表されたことに伴い、上場会社は、資本コストや資本収益性の的確な把握、それらの改善に向けた計画の策定・開示、投資者との対話を通じた取り組みの更新などを継続的に実施することが求められています。この状況を踏まえ、本年度のサーベイでは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた企業の取り組みについても調査しています。
これらのサーベイ結果が、日本企業のガバナンス態勢の推進および見直し検討の一助となれば幸いです。

本サーベイのエクゼクティブサマリについては、「GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)に関するサーベイ」 よりダウンロードいただけます。なお、サーベイにご協力いただいた企業には、全体レポートを無料配布いたします。

)過去の調査結果
・2022年度 「GRC(ガバナンス、リスクマネジメント、コンプライアンス)に関するサーベイ結果について~企業価値向上の観点からみるガバナンス・リスク管理態勢の課題~」(https://www.murc.jp/news/information/news_230201/
・2021年度 「コーポレートガバナンス/リスクマネジメントに関するサーベイ~サステナビリティ時代を生き抜くガバナンス態勢構築は道半ば~」(https://www.murc.jp/news/information/news_220201/

(2) 調査結果のポイント

① リスクトレンドの変化

【図表1】は日本企業がどのようなリスクを特に重視しているのかを一覧化したものです。前年度(2022年8月)調査と同様に、今回調査においても「事業環境の変化」が最も重視されていることがわかりました。地政学上の懸念、生成AIの台頭、マクロ経済の動向等の要因に基づく「事業環境の変化」にいかに対応していくべきか、こうした環境下で適切にリスクを管理しつつもいかに新たな価値を創造していくか、日本企業は今まさに重要な局面に立たされていることを表しています。
また、上位2位から10位に目を向けると、その傾向に大きな変化がみられます。前年度(2022年8月)調査と比較して、今回調査は「感染症」が上位から外れている一方で、「人的資本・労務管理」や「人事戦略」に関する項目が、より重要なリスクとして認識されはじめていることが伺えます。これは、人的資本経営に関するコンソーシアムの設立のほか、人権問題に関する報道の増加に伴い、企業の人権・人的資本経営への意識が高まっていることなどを反映しているとみられます。また、「サステナビリティ(気候変動)」関連のリスクについても、日本企業は引き続き高い関心を持って対応を進めているものと考えられます。

【図表1】 日本企業が重要視しているリスク
日本企業が重要視しているリスク

② 課題1:価値創造のためのリスクテイクとリスクカルチャー醸成

東京証券取引所が公表した「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」では、投資家を中心としたステークホルダーの要求に応えるべく、企業の資本収益性や市場評価の改善に向けた取り組み等を行うことで、中長期的な価値を創造していくことが求められています。企業の中長期的な成長や価値創造には、許容可能な範囲でリスクをとる(テイクする)ことによって収益化を狙う「攻めの姿勢」が必要であり、リスクテイク態勢を整備し、リスクを適切に取り扱うことが重要になります。本サーベイでは、リスクテイク態勢の整備は十分に進んでおらず、攻めのリスクマネジメントを意識した取り組みはいまだ広がっていないことが明らかになりました【図表2】。

【図表2】 リスクテイク態勢について導入しているものがあれば教えてください
リスクテイク態勢について導入しているものがあれば教えてください

リスクカルチャーは、リスク管理態勢の実効性を担保・向上するための基礎となるだけでなく、成長性や収益性につながる適切なリスクテイクを促すためにも重要です。また、不適切なリスクカルチャーは不正の間接的な要因となるおそれすらあります。しかしながら、リスクカルチャー醸成に向けた定期的な取り組みを行っている企業は1割にも満たないことがわかりました【図表3】。

【図表3】 社内でリスクカルチャーに関するサーベイは行われていますか
社内でリスクカルチャーに関するサーベイは行われていますか

③ 課題2:DXによる業務の高度化

GRC領域の業務では、企業・グループ全体のさまざまな情報が必要とされることから、適切な情報を即時に入手できることが業務効率化の要点となります。一方で、対象領域はコンプライアンス・インシデント管理・事業ポートフォリオ管理・サステナビリティなど多岐にわたるため、業務ごとに担当部署が独立していることが少なくはありません。専門領域ごとに担当部署が存在するのは必ずしも悪いことではありませんが、一方で、担当部署が複数にわたるために、業務プロセスが必要以上に複雑化することがあります。その結果として非効率が発生することや、必要な情報が適切に共有されないことで、全体として管理態勢が有効に機能しないといった問題も発生します。
情報を統合的に管理するデジタルプラットフォーム【図表4】の導入は、こうした問題を解決するうえで極めて有用です。しかしながら、GRC領域の業務にデジタルプラットフォームを導入している企業や導入を予定している企業は1割にも満たないのが現状です【図表5】。理由として「そもそも検討したことがない」と回答した割合が6割を超えており、GRC領域の業務にデジタルツールを活用する意識が十分に醸成されていない可能性があることが明らかになりました。

【図表4】 GRCプラットフォームのイメージ図
GRCプラットフォームのイメージ図
【図表5】 リスク管理プロセスの中に、GRCシステムなどのシステムを導入していますか
リスク管理プロセスの中に、GRCシステムなどのシステムを導入していますか

④ 今後の展望と企業に求められる対応

新たなリスクを管理しつつ企業価値の向上へつなげるためには、グループ全体に適切なガバナンス態勢を構築するとともに、従来の守りのリスク管理だけではなく、攻めのリスク管理によって事業環境の変化を収益に結びつける取り組みも求められます。また、これらの取り組みが有効に機能するためには、デジタルツールを活用した業務の高度化や、リスクカルチャーの醸成によってGRCの基礎を構築することが必要となります。
しかしながら、上述した通りこれらの取り組みを実践している日本企業はいまだ少数にとどまります。今後、日本企業は、これらの課題に対する取り組みを強化し、単にリスクから身を守るだけではなく、収益性と成長性を意識した経営の実現に向けてガバナンスをなお一層高度化していくことが望まれます。

2.調査概要

調査対象 売上高500億円以上または東証プライム/スタンダード上場企業のうち約5,300社
実施時期 2023年7月
調査手法 調査票郵送方式
※調査票の発送および回収、データ入力作業については株式会社東京商工リサーチに委託
有効回収数 273社(5.16%)
調査項目 Ⅰ.ガバナンス
Ⅱ.リスク管理/コンプライアンス
Ⅲ.GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)インフラ
Ⅳ.昨今の日本企業の環境変化
調査結果の表示方法 ①調査結果は百分比(%)で表示する。
②百分比(%)は端数処理の関係上、内訳の合計(100%)と一致しない場合がある。
③複数回答可の設問については、集計対象企業総数に対する百分比(%)の合計が100%を超える場合がある。
調査回答企業のプロファイル

本件に関するお問い合わせ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コンサルティング事業本部 GRCコンサルティング部
〒105-8501 東京都港区虎ノ門5-11-2オランダヒルズ森タワー
E-mail : grcsurvey@murc.jp

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コーポレート・コミュニケーション室 梨子本・廣瀬
E-mail : info@murc.jp