熊本県益城町との共同研究により災害対応初動マニュアル「アクションカード」のアプリを開発「熊本地震の経験・教訓×ICT技術の活用」で災害の初動対応をより円滑に

2021/04/02

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:村林 聡、以下MURC)は、3月24日、益城町(熊本県上益城郡、町長:西村 博則)と共に、「アクションカード共同研究成果報告会」を開催し、災害時の多拠点間における迅速な状況把握・情報共有に役立つICTツール「アプリ版アクションカード」を開発したことを発表しました。
「アクションカード」は、平成28年熊本地震(以下、熊本地震)の経験をきっかけに、益城町とMURCが平成30年(2018年)度から共同研究により開発してきたカード型の災害対応初動マニュアルで、組織規模の小さい益城町において必要とされる、災害発生時の初動対応手順を詳細に示していることが特徴です。これまでに開発した紙媒体のアクションカードをアプリ化することによって、オンライン上での情報共有が可能となり、災害対策本部機能を担う職員の参集先が多岐にわたった場合でも、迅速な初動対応確認ツールとして機能します。

アクションカード(イメージ)

アクションカードのイメージ
(※)勤務時間外に災害が発生し、職員が災害対策本部の設置される役場やその他の施設(役場が被災した場合の代替施設)など多拠点に参集した際、スマートフォン上のアプリ画面でアクションカードを確認し、実施した業務項目にチェックを付けることで、紙媒体ではできなかった迅速な情報共有が可能となる

昨今、全国の自治体のほか民間企業などでも、大規模災害経験の世代間継承や災害マニュアルの理解浸透・定着化は大きな課題であり、限られた人員で迅速に安全を確保する重要性も高まっている中で、アクションカードの有用性は高いものと考えられます。また、アプリ版アクションカードによって、遠隔から状況把握・情報共有が可能となったことは、withコロナ・Afterコロナ時代における、感染症対策と災害対応を両立させる1つの手段としても期待がもたれます。
今後は、共同研究で得られた知見をもとに、自治体・民間企業などの災害手引きのアクションカード化・webアプリ化を通じて、BCP対応の世代間継承、限られた人員での迅速な災害対応に繋げていきたいと考えています。

1.趣旨・背景

益城町は、熊本地震により震度7の揺れを2度経験し、大きな被害を受けました。その被害とその後の災害対応の中で明らかになった多くの課題や教訓を、今後の防災に向けた取り組みに反映することを目的に、益城町では、これまでの災害対応の検証を行うとともに、今後起こりうる災害に備えて、様々な対策検討を進めているところです。
一方、MURCは、国や全国の自治体・関連団体等への政策提案を担うべきシンクタンクとして、阪神・淡路大震災、東日本大震災、東海豪雨等、これまでの大規模災害で得られた教訓を、次の世代へ・未来のまちづくりへとしっかりと繋げていくため、防災計画・マニュアルの策定支援、職員向け災害研修・訓練の実施、その他防災・減災に関する情報発信等、全国の災害対応力向上を目指して多くの取り組みを行い、そのノウハウを積み重ねてきました。
益城町の職員が熊本地震の経験で実際に得た課題・教訓と、MURCがこれまでの自治体支援で培った知見・ノウハウを組み合わせることにより、益城町の災害対応体制構築を確実に行うとともに、他の全国自治体の災害対応力向上にも参考になるものを提供したいという両者の想いを具現化させる形で、「アクションカード」の開発を進めました。

2.「アクションカード」の概要と研究成果一覧

アクションカードとは、災害が発生したのち、最初に庁舎に到着した職員から順に、実施すべき対応手順を具体的に示したもので、平常時の職務分野や役職に関係なく、誰もが発災の初動対応ができることを主眼に開発した、カード型の災害対応初動マニュアルです。発災時に重要と考えられる優先度の高い初動対応を確実に実行することで、行政機能の空白をできるだけ無くし、自治体の災害対応業務の早期実施につなげることが期待できます。

各年度の研究成果

取組年度 成果内容
平成30年度
(1年目)
■庁舎版アクションカードの開発
(詳細)https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2019/03/news_190327.pdf
令和元年度
(2年目)
■避難所(学校施設)版アクションカードの開発
■庁舎版アクションカードの改良(ピクトグラム標記等による視認性の向上)
(詳細)https://www.murc.jp/wp-content/uploads/2020/03/news_200326.pdf
令和2年度
(3年目:今回)
■避難所(学校施設)版アクションカードの町内全小学校への展開
■保健福祉センター(注)版アクションカードの開発
■庁舎版/保健福祉センター(注)版アクションカードアプリの開発
(注) 保健福祉センターは、庁舎が被災した場合に災害対策本部を設置する代替施設となる

3.各組織の概要

益城町

熊本県益城町は、熊本県のほぼ中央部に位置し、町の北東部に阿蘇くまもと空港があり、西部には益城熊本空港インターチェンジを有し、田園と都市が調和する町として発展してきました。
平成28年熊本地震では、観測史上初となる震度7を2度経験した唯一の町です。熊本地震前は、熊本市のベッドタウン的要素から、人口も年々増加していましたが、地震前(平成28年3月末)34,499人だった人口が、令和3年2月末現在で、人口33,386人となっています。現在では、徐々に復旧復興も進んでおり、今後、少しずつ人口も回復することが見込まれています。
(Webサイト):
https://www.town.mashiki.lg.jp/

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

MURCは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)のシンクタンク・コンサルティングファームです。東京・名古屋・大阪を拠点に、国や地方自治体の政策に関する調査研究・提言、民間企業向け各種コンサルティング、経営情報サービスの提供、企業人材の育成支援、マクロ経済に関する調査研究・提言など、幅広い事業を展開しています。
特に、防災・BCPの分野では、防災・減災、国土強靭化に係る「ひとづくり」・「まちづくり」・「仕組みづくり」に関する研究活動に取り組む「防災・リスクマネジメント研究室」を組成し、過去の大規模災害で得られた教訓を拠り所に、今後発生が想定される大規模災害に備え、実行性のある災害対応体制構築のために研究を重ねることで、現場の行動に繋げていくことを目指しています。
(Webサイト):
https://www.murc.jp/
https://www.murc.jp/service/grc/ (防災・リスクマネジメント分野)

本件に関するお問い合わせ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
防災・リスクマネジメント研究室、研究開発第1部 [大阪] 平野誠也、秋元康男、吉成絵里香
〒530-8213 大阪市北区梅田2-5-25ハービスOSAKA
E-mail:actioncard@murc.jp

報道機関からのお問い合わせ

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社
コーポレート・コミュニケーション室|梨子本・竹澤
E-mail:info@murc.jp