今月のグラフ(2022年8月) 輸出、輸入の両面で利用が進むRCEP協定

2022/08/03 中田 一良
今月のグラフ
国内マクロ経済

日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、ASEAN加盟10か国が署名した地域的な包括的経済連携(Regional Comprehensive Economic Partnership、RCEP)協定が2022年1月に発効した。現時点では国内手続きを終えた12か国間で発効しており、未発効国はインドネシア、ミャンマー、フィリピンである。RCEP協定が発効したことによって、日中、日韓の間で関税の引き下げが行われており、RCEPにおける原産地規則を満たす品目については通常よりも低い関税率が適用されるようになっている。

RCEPは日本の輸出においてどの程度利用されているのだろうか。RCEPを利用した輸出額は公表されていないものの、利用状況をみるうえで参考になるものとして、輸入先で関税減免のメリットを享受するために必要となる、輸出国の第三者(日本商工会議所)による原産地証明書の発給件数がある(図表1)。第三者による原産地証明書は日本が締結したすべての経済連携協定(Economic Partnership Agreement、EPA)で必要というわけではないが、図表1によると、RCEPの発給件数は発効後、急速に増加し、第三者による原産地証明書が必要なEPAの中では、6月には日タイEPAを抜いて最も多くなっている。

EPAが発効すると、そのEPAを利用する輸出企業が増加するため、発効直後には発給件数が増加しやすい。また、RCEPは、日タイEPAのように一国と締結しているEPAと比較すると輸出可能な相手国数が多いという事情があるものの、日本の輸出においてRCEPが積極的に利用されていることが窺える。

次に日本の輸入についてみてみよう。RCEPを利用した輸入額(2022年1月から4月までの合計)について輸出元の原産国の構成比をみると、中国が約90%、韓国が約8%となっており、これら2か国で大部分を占める。中国の構成比が非常に高いのは、中国からの輸入額そのものが他の国よりも大きいことに加えて、中国、韓国以外のRCEP発効国についてはRCEP発効前に他のEPAが締結されており、それらを利用して輸入されているためであると考えられる。

RCEPを利用した輸入額が大きい中国、韓国からの輸入について、品目構成比をみたのが図表2である。中国からの輸入では、繊維・衣類の割合が高く、次いで化学製品の割合が高い。韓国からの輸入ではプラスチック・ゴム製品、化学製品の割合が高いという特徴がある。日本は発効時に関税を引き下げた後、2022年4月に2度目の引き下げを行っており、たとえば中国から輸入する衣類については、通常の関税率は10.9%であるが、RCEPで適用される関税率は9.5%となっているものがある。こうした関税引き下げを背景に、有税品目の輸入においてRCEPが利用されていると考えられる。

輸入にあたり、RCEPをはじめとするEPAを利用することは、そのための手続きを必要とするものの、さまざまな調達コストが増加する中、規模は大きくないものの、コスト削減につながる。中国や韓国から輸入を行っている事業者は少なくないと考えられ、より多くの事業者がRCEPを利用することが期待される。

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