2023年3月、「北海道ボールパークFビレッジ（以下、F VILLAGE）」が北海道北広島市に誕生しました。北海道日本ハムファイターズの新本拠地である「ESCON FIELD HOKKAIDO（以下、エスコンフィールド）」を中心に、総合エンターテインメント施設として人気を博しています。当社は、レポート作成を通じてF VILLAGEがもたらす影響を可視化するプロジェクトを担当しました［¹］。プロジェクトを主導したコンサルタントの大野知也が、その概要やかけた想いを語ります。

北の大地から始まる、スポーツを起点にしたまちづくり

Q. F VILLAGEの概要を簡単に教えてください。

F VILLAGEは、野球観戦やイベントをはじめ、天然温泉やアスレチック、グランピングなど、さまざまなアクティビティが楽しめる施設です。道内外の多くの方から支持を集めており、2024年には、来場者数が年間400万人を突破しました。スタジアムビジネスを軸に、多岐にわたる事業を展開することで、地域活性化に貢献しています。

Q. F VILLAGEに関して、当社はどのような役割を担っているのでしょうか？

F VILLAGEの取り組みが社会・経済へ波及したインパクトを可視化することです。具体的には、行政機関や、F VILLAGEの運営を担当する株式会社ファイターズスポーツ＆エンターテイメント（以下、FSE）の協力を受けて、F VILLAGEが北広島市や北海道全体、関連するステークホルダーなどへもたらす経済的・社会的価値を併せた“統合的価値”を示すレポートを作成しました。開業してから約半年間の数値データや北広島市民に対する住民アンケートの結果を基に、F VILLAGEが生み出した価値を示しています。

本プロジェクトのきっかけとなったのは、当社のグループ企業である株式会社三菱UFJ銀行（以下、三菱UFJ銀行）がFSEとパートナーシップ契約を締結していたことにあります［²］。この契約は、金融とスポーツの掛け合わせによる新たな事業共創と地域課題の解決を目指して結ばれました。そのプロジェクトの出発点として、レポートを通じてF VILLAGEがもたらす価値を可視化し、同施設の影響力を広く伝えることを目的としています。

Q.具体的に、F VILLAGEはどのような価値を生み出しているのでしょうか？

2024年1月時点の推計によると、2023年の1年間で北広島市に500億円を超える経済効果を生み出しました。その影響は隣接地域にも波及し、北海道全体における経済効果は各年で約1,000億円を誇っています。それに加えて、周辺地域の地価は平均して1.5倍上昇しました。そのため、この地域は多くの投資家や企業に注目されており、商業施設やマンションなどの建築が次々に進んでいます。

そして、経済だけではなく、社会的にも大きな影響をおよぼしています。もともと北広島市は、人口減少の問題に直面していました。ですが、周辺の住宅設備や生活基盤が整備されたことによって、人口減少に歯止めをかけ、増加に転じる期待がされています。多くの地方都市が人口減少に頭を抱える中、その解決の糸口を見いだしており、社会的な観点からも大きな影響があると言えます。その他にも、市外から北広島市へ来訪する交流人口が年間約400万人以上増加したり、多くの企業が参入していることでオープンイノベーションによる新しいソリューションを実証できたり、さまざまな価値を生み出しているのです。

コンサルティング事業本部経営戦略第１部シニアマネージャー大野

スポーツによる地方創生へ、前例のない挑戦

Q.価値の評価・分析にあたって、どのようなことを意識しましたか？

第三者として、フラットな立場で価値を評価することを心がけました。私たちの仕事は、F VILLAGEが地域の暮らしや経済にどのような影響を与えたかを、客観的な立場から評価したものです。そのため、第三者のシンクタンク・コンサルティングファームとして、ファクトに基づく評価を行いました。F VILLAGEが持続的に価値を生み出していくためには、　良い影響だけではなく現実的な課題にも目を向けなければなりません。大規模な民設民営のスタジアムビジネスという、前例のないプロジェクトに挑戦しているからこそ、事前に想定しうるリスクや課題は把握しておく必要があります。それに、エスコンフィールド建設にあたって、少なからず反対の声が上がっていたのも事実です。地域の皆さま一人ひとりの声に耳を傾けるためにも、客観的な視点を持って事実に寄り添って評価・分析することが重要でした。価値評価や課題の抽出にあたっては、過去に当社が手掛けた他のスタジアム案件の知見も活用することでより現実に即した内容とすることができたと思います。

Q.プロジェクトを通じて、どのような成果を感じていますか？

スタジアムビジネスの新しい可能性を示せたのではないでしょうか。現在、多くの地方都市において、人口減少や高齢化、過疎化などが深刻な課題として浮き彫りになってきています。地方都市にスポーツの拠点を作り、地元チームを中心としたまちづくりを促進することは、今後、地方創生のひとつの形になっていくはずです。F VILLAGEの成功事例を示すことは、多くの地方都市において課題解決の糸口を提示することにつながります。実際、このレポートをきっかけに、行政機関や企業からお問い合わせを多数いただいています。

Q.最後に、大野さんにとって当社で取り組むコンサルティングのやりがいを教えてください。

MUFGのケイパビリティを生かし、産業育成や地域活性化につながるような大規模案件に取り組んできました。これまで、JリーグやBリーグなど、多くのスポーツ産業のコンサルティングを担当してきました。F VILLAGEのプロジェクトは、その集大成と言えるかもしれません。これまで培ってきたスタジアムビジネスに関する知見を生かせば、より多くの地域に貢献できると思っています。実は、日本はスポーツを産業としてみると、海外に比べてまだ発展途上の段階にあります。成功事例が少ない分、比較的大きな社会課題解決やイノベーションの創出に携われることが、この仕事の大きなやりがいにつながっています。

F VILLAGEが地域や北海道、関連するステークホルダーにもたらす価値を可視化した当社のレポートは、以下よりご覧いただけます。
「北海道ボールパークFビレッジによってもたらされる統合的価値評価レポート」

［ 1 ］F VILLAGEが地域や北海道・関連するステークホルダーにもたらす価値の可視化を目的とした当社レポート「北海道ボールパークFビレッジによってもたらされる統合的価値評価レポート」
［ 2 ］三菱UFJ銀行「株式会社ファイターズスポーツ＆エンターテイメントとのパートナーシップ契約締結について」

大野知也（おおのともや）
コンサルティング事業本部
経営戦略ビジネスユニット　経営戦略第１部
シニアマネージャー
profile慶応義塾大学商学研究科卒コーポレートガバナンス専攻を修了後、2001年に入社。経営戦略や新規事業戦略、マーケティングなど多種多様なコンサルティングを担当。商業や小売業に関する幅広い知見を生かして、「EDION PEACE WING HIROSHIMA」などさまざまなスタジアムビジネスに携わってきた。

関連サービス
経営計画、事業戦略、事業開発、ビジョン、IR、MVV
成長戦略／新規事業戦略
 マーケティング戦略

※所属・肩書は記事公開時点のものです

クローズアップトップ

スポーツ×まちづくり F VILLAGEが示すスタジアムビジネスの可能性

テーマ・タグから見つける

テーマ

タグ

スポーツ×まちづくり　F VILLAGEが示すスタジアムビジネスの可能性