コーポレートアドバイザリー部（以下、CA部）は、企業の持続的成長や事業承継を支える資本戦略の最前線で活躍しています。なかでも、M&Aアドバイザリー業務では、金融機関との強力な連携を活かしつつ、初期構想から実行後の統合まで一貫したサポートを提供。長期にわたり企業に寄り添い、一社一社の課題に丁寧に向き合っています。今回は、部を率いる木俣貴光と、酒井宏輝、新開真輝の3名に、同部の業務内容や強み、やりがいなどを聞きました。

金融機関グループだからこそ実現できる支援体制

Q.CA部の業務内容について教えてください。

木俣：CA部は、「FAS（財務アドバイザリーサービス）×経営コンサルティング」をコンセプトとし、幅広い企業を対象に経営戦略に基づいた資本戦略のコンサルティングを行っています。主なテーマは「M&A」「グループ組織再編」「事業承継」の3つで、経営的観点から高度な財務アドバイザリーサービスを提供しています。特にM&Aに関しては、M&Aアドバイザリー業務（いわゆるFA業務）だけではなく、M&Aの前工程であるM&A戦略立案や後工程であるPMI［¹］まで一気通貫でご支援しています。なかでも、最近はPMIのニーズの高まりを感じています。なお、現在は東京・大阪・名古屋の3拠点で約50名の体制です。

私自身は2022年以降、M&A分野で中小企業庁の各種委員会に専門委員として参加し、「中小PMIガイドライン」の策定や「中小M&Aガイドライン」の改訂、「中小エクイティ・ファイナンスに係るガバナンス検討会」などに携わってきました。本年度は「中小M&A市場の改革に向けた検討会」の委員も務めています。

日本企業の99％以上を占める中小企業が、M&Aを通じて生産性を高め、持続的に成長していくことは、極めて重要な社会課題です。国も強い問題意識を持ち、各種ガイドラインを急ピッチで整備しています。こうした政策に関われることには大きな意義があり、当社やMUFGのM&Aビジネスの信頼性向上にもつながればと考えています。社会全体への貢献、という強い使命感を持ってこの仕事に取り組んでいます。

コンサルティング事業本部　マネージング・ディレクター　木俣

Q.株式会社三菱UFJ銀行（以下、三菱UFJ銀行）と連携することが多いそうですが、当社の役割や業務はどのようなものでしょうか？

酒井：M&Aアドバイザリー業務と、それ以外のコンサルティング業務の2つに分けてお話しします。
まず、M&Aアドバイザリー業務では三菱UFJ銀行と契約されているお客さまに対して、私たちが三菱UFJ銀行と共同チームを組んで対応します。私たちの業務は、買い手・売り手が関心を持った段階から本格化し、価格だけでなく、従業員の引き継ぎやブランド、所在地など、さまざまな条件を丁寧に整理・調整していくことです。双方の意向をくみ取りながら、真にマッチする相手と円滑な関係が築けるかを見きわめ、形にしていくことが重要な役割です。

次に、コンサルティング業務としては、M&A戦略策定、持株会社体制移行、グループ内組織再編、事業承継などがあり、三菱UFJ銀行から「お客さまにこういったニーズがあるが、対応できるか？」といった相談を受けるのが出発点です。ニーズに対して必要な支援を検討し、ときには他部署とも連携しながら、お客さまの課題解決をサポートします。

Q.M&A業務に関する当社の強みを教えてください。

酒井：会社を売却する、という相談は誰にでもできるものではなく、信頼できる金融機関の担当者など限られた相手にしかできません。当社はMUFGの一員として、こうした「売却情報の入手」にしかるべきルートを有するという強みがあります。

また、売り手側のアドバイザーとして買い手候補企業にアプローチする際も、MUFGとして築いてきた関係性により、意思決定のキーマンにスムーズにつながることが可能です。独立系アドバイザー企業では、キーマンにたどり着くのは容易ではないと思います。この点でも金融機関系の強みは明確です。特に、三菱UFJ銀行の顧客基盤とネットワークの広さは圧倒的で、私自身、他の金融グループで働いた経験からも、その差を実感しています。

もう１つの強みは「ビジネス視点」を踏まえた売却戦略の立案です。たとえば「今後の事業成長のためにはどのような形で売却するのか」「売却事業の安定的な成長のために買い手の事業戦略はどうあるべきか」「買い手にはどのようなシナジーが期待できるか」などを慎重に検討する必要があります。総合コンサルティングファームでもある当社では、経営戦略部門のコンサルタントが加わり、戦略的な視点から売却のシナリオを構築することができるのです。

また、買い手側のアドバイザーを務める際にも、買収後のシステム統合や人事制度の調整といった課題に対して、当社の専門コンサルタントが対応可能で、M&Aの前と後を通じて一貫した支援が提供できる点も強みの１つです。

コンサルティング事業本部　プリンシパル　酒井

Q.やりがいを感じるのはどのようなときですか？

木俣：私は、「単発ではなく、長期的に伴走できるコンサルタントでありたい」と考えています。そのため、１つの案件を終えた後に再びご相談をいただけたときに、最も大きなやりがいを感じます。M&Aや事業承継は繊細なテーマであり、「本当に信頼できる相手にしか任せたくない」というのが経営者の自然な感情です。過去のお客さまから再び相談していただけたこと自体を信頼の証だと受け止めています。

CA部は、資本戦略に関する幅広いテーマに一貫して対応できるのが特長です。これは、他社ではあまり見られないことであり、メンバーも多様な分野に携わることが可能です。資本戦略全般に関する幅広いスキルを身につけることができ、お客さまの多様なニーズに応える力を養うことができます。この体制があるからこそ、お客さまと長期的な信頼関係を築き、継続的に支援することが可能となるのです。

酒井：私はM&Aの売り手側のアドバイザーを担当することが多いです。売り手は「できるだけ高く売りたい」と考え、将来の業績予想を強気に、楽観的に示す傾向があります。一方、売却事業を運営する対象会社（以下、「対象会社」）［²］の経営陣は、買収後にその計画を実現する責任があり、「高値で売却されることはつらい」と感じることもあります。買い手は当然「安く買いたい」と考えるため、三者の利害を一致させるのは簡単ではありません。

私の理想は、売り手が納得できる価格で売却し、対象会社が無理なく事業を継続し、買い手も満足できる「三方よし」のM&Aです。そうした案件が実現でき、三者から感謝の言葉をいただけたとき、自分が関与してよかったなと思います。

現実には債務返済などで売り価格に制約があり、対象会社や買い手に負担をお願いすることもあります。ただ、売り手都合で進めれば社員の退職などで事業の持続性を損なうリスクもあります。だからこそ、「成立させること」ではなく、「案件後も全員が納得し、良好な関係が続くM&A」を目ざしています。

実際に、売り手を担当した案件をきっかけに、買い手から次の相談をいただくこともあります。これはご支援が評価された結果ですので、とてもうれしく、やりがいを感じる瞬間です。

人材育成と組織の進化で国内有数の財務アドバイザリー組織へ

Q.キャリア形成に関する取り組みについて教えてください。

酒井：当社では、社員が自律的にキャリア選択することを奨励しており、まず幅広く経験したうえで、自分の強みや専門性を見つけて成長していける環境を整えています。

私はメンバーに対し、「やりたい業務」と「評価される業務」をバランスよく組み合わせることを勧めています。たとえば、1年の半分を評価重視、残りを希望の業務にあてることで、昇格のチャンスを得ながらモチベーションも保つことができます。また、本人のキャリア形成の意向をふまえ、三菱UFJ銀行をはじめとする他社への出向や、他部署への異動をした方もいます。これにより個人の視野が広がれば、お客さまへの新たな価値の還元につながります。

また、研修の体制も充実させています。当部が属するコンサルティング事業本部では、4月から7月にかけて新入社員を主な対象とした集中研修を実施しています。研修後に配属される社員は高いPCスキルを身につけています。もちろん、ファイナンスや財務の知識は仕事を通じて学んでいきますが、PCスキルがあることで、早期に専門業務に集中することができます。

加えて、CA部独自の研修も行っています。M&A未経験者向けには10回以上のロールプレイ研修があり、実務に直結するスキルを習得できます。さらに、他部署との協働プロジェクトも多く、若手にとって学びの多い環境です。

Q.若手社員の新開さんへ伺います。これまでの業務で得た学びについて教えてください。

新開：当社が扱う案件は、大企業向けと中小・オーナー企業向けに大別され、それぞれ求められるスキルが異なるというのが、私の経験からの実感です。

大企業向け案件では、ロジカルシンキングや高い専門性が重視されます。たとえば、私が買い手側のアドバイザーとして関与した大企業向け案件では、売り手より開示された事業計画が楽観的だったことを踏まえ、蓋然性の高い計画数値の策定を買い手と連携しながら行いました。通常の案件であれば3～4パターン程度のシミュレーションですが、この案件では10数パターンのシミュレーションを作成したうえで、対象会社の価値算定を行い、最終的には買い手と売り手の双方が納得する価格で合意することができました。特に高い専門性が要求されると感じた事例です。

一方、中小・オーナー企業向けの案件においては、専門性が必要とされることは当然ながら、加えて企業の状況に寄り添う姿勢が求められます。中小企業では人手が足りず、M&Aへの対応が困難なケースが多々あります。特に売り手は、デューデリジェンスの際、買い手からの財務情報や契約などに関する膨大な質問に答える必要があります。私が売り手側のアドバイザーとして担当した案件では、段ボール数箱分の資料をお預かりしたうえで、買い手に開示すべき情報の仕分けを行いました。M&A業務はスマートなイメージがありますが、実際にはこうした地道なサポートを通じて、お客さまから感謝の言葉をいただき、信頼関係の構築や案件成約につながったと感じています。

多様な企業規模の案件を経験できる当部だからこそ、このように幅広い学びを得ることができました。

コンサルティング事業本部　コンサルタント　新開

Q.CA部の魅力はどのようなことでしょうか？

新開：私が感じる魅力は大きく2つあります。
1つ目は「業務の幅広さ」です。他社ではM&Aの実行（エグゼキューション）やPMIなど一部のみを担当することが多いと思います。しかし、当社ではプレM&A、エグゼキューション、PMIと、M&Aに関するプロセスを初期段階から完了まで一貫して関わることができます。さらに、事業承継や組織再編にも携われるため、M&A業務だけでは得られない多様な実務経験を積むことができます。

2つ目は「主体的なキャリア形成がしやすいこと」です。主体的に希望しながら多様な経験を積み、自由度の高いキャリア形成が可能です。私自身も実際に、幅広い業務を経験しながらも、自分が将来の専門領域として追求したい分野を中心に携わることができています。

Q.最後に今後の目標を聞かせてください。

木俣：私たちは中堅・中小企業から大企業までを幅広く支援し、国内有数の財務アドバイザリー組織として社内外から高く評価される存在を目ざしています。

現時点においても、M&Aアドバイザリーだけでなく、M&A戦略立案やPMI、事業承継やファミリーガバナンス（オーナー家のルールづくり）、グループ経営の高度化など、資本戦略全般に対応していますが、今後は、これらの関連分野においてサービスの幅を広げ、さらに質の向上にも取り組んでいきます。

今の時代、経営戦略と資本戦略は経営の両輪です。資本戦略の観点から、幅広いテーマで自らのスキルを向上させ、中堅・中小企業から大企業にいたるまで、多様なお客さまの成長に貢献していきたいと考える方に、ぜひ当部に参画していただけるとうれしく思います。MUFGのネットワークを背景に、そうした機会を十分に提供できる自信があります。

［ 1 ］Post Merger Integration（ポスト・マージャー・インテグレーション）。M&Aが成立した後に行われる統合プロセスを指す。
［ 2 ］M＆Aにおいて主に、買収・合併の対象、売却・譲渡される側の企業を指す。

木俣貴光（きまたたかみつ）
コンサルティング事業本部　
経営戦略ビジネスユニット　コーポレートアドバイザリー部
部長　マネージング・ディレクター
profile早稲田大学政治経済学部卒業後、大手石油会社、外資系コンサルティング会社を経て現職。専門は、M&A、事業承継、グループ組織再編等。名古屋市立大学大学院修了（経済学修士）。中小企業庁「中小PMIガイドライン策定小委員会」委員、「中小M&Aガイドライン改訂小委員会」委員、「中小M&A市場の改革に向けた検討会」委員等を歴任。主な著書に実務小説『企業買収』（中央経済社、2012年）、『M&A戦略の立案プロセス』（中央経済社、2019年）、『企業買収の実務プロセス第3版』（中央経済社、2021年）、『PMIの実務プロセス』（中央経済社、2023年）などM&A関連の著書多数。

酒井宏輝（さかいひろてる）
コンサルティング事業本部　
経営戦略ビジネスユニット　コーポレートアドバイザリー部
プリンシパル
profile同志社大学大学院修了後、国内大手証券会社、監査法人系M&Aアドバイザリーファームを経て当社に入社。これまで主にFAとしてM&Aアドバイザリー業務に従事しながら、当社ではグループ組織再編、M&A戦略策定、プレM&A案件にも関与。

新開真輝（しんかいまさき）
コンサルティング事業本部　
経営戦略ビジネスユニット　コーポレートアドバイザリー部
コンサルタント
profile上智大学経済学部経済学科卒業後、2021年に当社入社。その後、監査法人系M&Aアドバイザリーファームを経て、当社に復職。これまで主にFAとしてM&Aアドバイザリー業務に従事しながら、当社ではグループ組織再編、事業承継にも関与。

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M＆Aアドバイザリー及び関連コンサルティング
 グループ組織再編・事業承継コンサルティング

※所属・肩書は記事公開時点のものです

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