【取締役会スキルマトリックス】最新開示状況調査から読み解く作成・開示のポイント(1)~スキルマトリックス開示状況の実態~
2021年8月25日付Quick経営トレンド『取締役会スキルマトリックスの作成における確認点』では、スキルマトリックス作成の基本的な考え方を解説しました。本稿では、当社にて実施した「日本企業におけるスキルマトリックスの最新開示状況に関する調査」1結果に基づき、スキルマトリックスの作成・開示にあたってのポイントをご紹介します(3回連載)。
【図1】スキルマトリックスの構造
(出所)当社作成
1.開示対象者
スキルマトリックスの開示対象者を見ていくと、最も多かったのは取締役(社外取締役を含む)のみを対象とした企業で、半数弱を占めました。また、取締役と監査役について開示した企業は4割、社外取締役と監査役について開示した企業は1割、社外取締役のみを開示した企業は1割、取締役と執行役員について開示した企業は1社にとどまりました。
2. スキル項目
スキルマトリックスに記載するスキル項目数も企業間で差が見られました。7項目または8項目を記載した企業が多く、7項目は全体の3割、8項目は2割でした。一方、最少は3項目、最多は16項目でした。 また、スキルマトリックスを説明するものとして、各スキル項目の定義や選定理由を明記していた企業は、4社にとどまりました。
3. スキルの表示を付す際の判定方法
対象者の各項目にスキルの表示(「○」等)を付す際の判定方法方も企業ごとに異なります。大別すると、①現時点で各対象者が保有しているスキルに着目するか、②各対象者がどの分野で専門性を発揮することを期待しているか、に分けられます。①の考え方にのっとり、候補者として選定した理由に「有している能力」等の記載があることをもって、「スキル等を保有していること」と判定した企業は、全体の6割でした。一方、②の考え方を基本に、「特に期待する分野・専門性」等の記載をもって「スキル等の発揮を期待できること」と判定した企業は、全体の3割でした。
また、各対象者に対しスキルの表示を付す数に上限を設けた企業は全体の1割で、中でも3項目を上限とした企業が多く見られました。
【図2】スキルマトリックスの開示状況 集計結果
(n=107)
1.開示対象範囲 | ■取締役のみ: 52社 ■取締役と監査役: 38社 ■社外取締役と監査役: 7社 ■社外取締役のみ: 9社 ■取締役と執行役員: 1社 |
---|---|
2.スキル項目 | ■記載数 ・7個:32社 ・8個:19社■定義や選定理由を説明:4社 |
3.スキルの表示(「〇」等)を 付す際の判定方法 |
■判定基準 ・スキル等を保有していること: 66社 ・スキル等の発揮を期待できること: 34社■スキルの表示を付す数に上限あり: 12社 |
(出所)当社作成
スキルマトリックスの作成・開示においては、「開示対象者を誰とするか」「取締役会が備えるべきスキル項目をどのように定義・選定するか」「スキル等の有無の判定基準をどのように設定するか」が主な検討ポイントとなります。
例えば、監査役や執行役員も開示対象者とすることは、経営体制の妥当性を示すうえで望ましいと考えられます。一方、スキル項目数が少ない場合、取締役会が備えるべきスキル項目の選定に漏れがある可能性があります。さらに、スキル項目の定義や選定理由が記載されないスキルマトリックスの場合、取締役選任の適正性を株主・投資家が判断することにつながらない可能性もあります。
このような作成・開示におけるポイントについて、次回以降2回にわたり、開示状況の考察や事例も交えながら、「スキル項目設定の傾向」や「スキル項目への該当性の判定の考え方」等を解説します。
■関連資料のダウンロードはこちらから
【資料ダウンロード】『取締役会スキルマトリックスの最新開示状況に関する調査結果』を踏まえた整備方法
■関連レポートはこちらから
取締役会スキルマトリックスの作成における確認点(2021年8月25日)
【取締役会スキルマトリックス】最新開示状況調査から読み解く作成・開示のポイント
(2)スキル項目設定の傾向(2021年11月24日)
(3)スキル項目への該当性の判定の考え方(2021年11月29日)
1 本調査は、2021年8月中旬から9月上旬にかけて実施。株式時価総額上位100社(2021年4月1日時点)および日経225銘柄企業のうち、最新の株主総会招集通知でスキルマトリックスを開示した107社について、「開示対象者」「スキル項目」「スキルの表示(『○』等)を付す際の判定方法」を集計した。
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