学校法人におけるガバナンス改革の現状について

2021/11/15 中嶋 淳一郎、山内 哲也
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私立大学をはじめとした学校法人のガバナンス改革を目指し、近年、文部科学省は関連制度の改正を推進しています。具体的には外部有識者からなる「学校法人ガバナンス改革会議1」を設置し、公益法人として税制上の優遇措置がある学校法人の経営に対するチェック体制の在り方などを審議しています。同会議は2021年内にも報告書を取りまとめ、年明けには法制化が行われる予定です。そこで本稿では今まさに継続中の議論を踏まえ、学校法人におけるガバナンス改革のポイントを三つに分けて解説します。

これまでの経緯について

これまでの経緯としては、学校法人の現役理事長をはじめ産業界から公認会計士や上場会社取締役および監査役経験者等を構成員として2020年に設置された「学校法人のガバナンスに関する有識者会議2」が翌2021年3月に「学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取組の基本的な方向性について」を取りまとめ、学校法人としての基本的な方向性を提示しました。この検討結果を踏まえ、学校法人理事長を構成員としない「学校法人ガバナンス改革会議」が設置されました。同会議では、手厚い税制優遇を受ける学校法人において、社会福祉法人制度、公益社団・財団法人制度など他の公益法人と同等のガバナンス機能が発揮されることを目指し、制度改正に向けた抜本的な改革案を取りまとめています。この改革案を踏まえ、2022年春の通常国会で私立学校法など関係法令の改正案提出が見込まれています。

学校法人におけるガバナンス改革のポイント

1. 不祥事を防止するための「守り」のガバナンス

理事または理事長クラスが関与している私立大学などの学校法人での不祥事が、相次いで報じられています。背任行為や不正入学、横領等、これら悪質な不祥事事案の発生を防ぎ、社会からの信頼性を確保する「守り」のガバナンスのために、これまで権限が集中していた理事および理事長の行為をチェック・監督できる評議員会などの機能強化が必要となります。例えば、評議員会に理事や監事といった役員の選解任権限を与えることや、監事の独立性強化等の施策が挙げられます。

2. 中長期での価値創造のための「攻め」のガバナンス

少子化、グローバル競争またはテクノロジーの進展等、著しく変化する経営環境下において、「守り」だけではなく、「攻め」のガバナンスの視点も重要となります。理事に集中していた経営の監督と執行を分離したうえで、優れた理事長や理事、監事を選任し、教育の質を向上させるとともに、ステークホルダーへの要求に応えつつ価値創造を目指すことが求められています。言い換えれば、「攻め」のガバナンスとは、優れたリーダーの下、中長期での価値創造を念頭に置いた「攻め」の経営につながる施策でもあります。

3. 情報開示の重要性

さらに、「攻め」と「守り」のガバナンス体制を構築した結果を積極的に外部へ情報公開することは、社会からの信頼向上につながります。日本私立大学協会、日本私立大学連盟および国立大学協会等の各大学団体からガバナンス・コードが公表されています。各学校法人はできるだけ早期に、ガバナンス・コードに対する適合性をコンプライ・オア・エクスプレイン結果(※)に基づいて明示し公表することが望まれます。積極的な情報開示は、自律的かつ透明性の高いガバナンス体制を構築することにもつながります。
※原則を実施しているか、実施していない場合はその理由を説明すること

さいごに

学校法人には今後、不祥事を防止するための「守り」のガバナンスと不確実な経営環境を乗り切るための「攻め」のガバナンスの構築、さらにガバナンスの透明性確保のために情報開示の拡充が必要になります。文部科学省に設置された「学校法人ガバナンス改革会議」は、多くの学校法人関係者がその行方を見守る中、2021年12月には決着し、今後の方向性が明確になります。ガバナンス改革は、私立大学をはじめとした学校法人が、相次ぐ不祥事をうけて傷ついた社会からの信頼を取り戻すだけではなく、経営をより強固かつ強靭なものにし、ひいては教育の質向上につながるものです。そのため、法改正を待たずとも、まずは自法人のガバナンスの現状を棚卸しすることから始めてみてはいかがでしょうか。

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