アジャイルなBCM ~コロナ禍で重要度を増したBCPの高度化~

2022/05/24 大重 貴之、上本 高志
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新型コロナウイルスが次々と変異を繰り返しており、収束の兆しが見えない状況が続いています。他方、現在流行しているオミクロン株は、従来のウイルスよりも重症化する割合が低いとされています。さらに潜伏期間の短さも相まって、これまでの各種行動規制(海外渡航禁止、テレワーク等)を見直し、ウィズコロナを前提とした対応に切り替える動きも出てきています。

このように時々刻々と社会情勢が変化する中においても事業を円滑に継続するため、企業にはアジャイル(機動的)な事業継続マネジメント(Business Continuity Management:BCM)の実行が求められています。

企業を取り巻く状況の変化

2022年1月以降、オミクロン株の流行により、日本国内における新型コロナウイルス感染症の新規陽性者数が急増し、いわゆる「第6波」を迎えました。一方、この「第6波」においては、重症化率の算出が始まった2020年5月8日以降、最も低い水準で推移しており、欧米をはじめとした諸外国では新型コロナウイルスの規制を緩和する動きが徐々に広がっています。

このような状況下において、これまでの出社人数制限や出張禁止措置を見直すなど、企業等の対応にも変化が出てきています。

図 

(出所)当社作成

「想定外」との対峙

民間調査によると、日本では約2割の企業が、新型コロナウイルスの流行を機に事業継続計画(Business Continuity Plan:BCP)の見直しを行っている、または見直しを検討している状況です。これはBCPを策定している企業の約半数にあたり、新型コロナウイルス禍が、いかに多くの企業にとって既存のBCPの想定を超える事象であったかを示しています。

「想定外」を極小化するために

BCMの意義は、「想定外」の極小化にあると言っても過言ではありません。想定外を極小化するためには、パンデミックや地震など個々の災害をベースに考えるのではなく、企業の経営資源への被害・影響を起点とするオールハザード型とすることが重要です。加えて今回の新型コロナウイルスのように、BCPの想定を超える事象は突然発生することから、BCP上であらかじめアジャイルな対応を想定しておくこともポイントとなります。

では、「アジャイルな対応」を想定するとはどのようなことをいうのでしょうか。今回の新型コロナウイルスの変異を例に考えてみましょう。

オミクロン株の登場以前、社会においては感染拡大防止に向けて各種行動規制(海外渡航停止やイベントの規制等)やテレワークの推奨などが行われ、各企業においても3密(密接・密集・密閉)の回避等の感染対策やテレワーク可能な態勢への移行が進められました。社会からの要請のみならず事業継続の観点からも、感染対策やテレワークを強く推進すべしとの仮説が、各企業にて構築されていました。

しかし、オミクロン株登場後は、ワクチン接種率の高まりや重症化率の低さに鑑みて各種規制を撤廃する国が出始めるなど、社会の動向に変化が表れました。企業は情報収集を通じてこのような変化を把握し、感染対策により制約を受けていた事業活動について一度構築した仮説を見直します。これによって、企業は感染対策には引き続き留意しつつも柔軟に対応することが可能となります。まさに、「アジャイルな対応」を実行すべき一場面といえるでしょう。

図 

(出所)当社作成

一定の期間でPDCAサイクルを運用するのが通常のBCMですが、状況の変化に応じて、臨機応変な対応が求められるのも事実です。社会変化の大きい昨今、想定外の事象への対応までもBCPに盛り込んだアジャイルなBCMの実行が求められています。

【資料ダウンロード】
『事業継続コンサルティング~機動的(アジャイル)な事業継続に向けて~』はこちら


株式会社帝国データバンク 「オミクロン株の感染拡大を踏まえた事業継続計画(BCP)に関する企業の動向アンケート」 (参照 2022-05-18)

執筆者

  • 大重 貴之

    コンサルティング事業本部

    サステナビリティビジネスユニット サステナビリティ戦略部

    シニアマネージャー

    大重 貴之
  • 上本 高志

    コンサルティング事業本部

    サステナビリティビジネスユニット サステナビリティ戦略部

    コンサルタント

    上本 高志
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