Z世代を読み解く(2)~Z世代のモチベーションの源泉とは~

2024/04/12 福田 潤也
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前回のコラムでは、Z世代の理解について、「なぜ理解が必要なのか、何を理解する必要があるのか」という観点についてご紹介しました。本コラムでは、Z世代のモチベーションの源泉でもある「幸福感と労働価値観」について考えていきます。

Z世代の幸福感

Z世代は、VUCAと呼ばれる時代の中で成長しました。この時代の特徴は、未来に対する不確実性・不透明感によって将来における幸福なイメージを描きにくい点があります。結果として、Z世代は「未来の幸福に向かって今を積み重ねる」よりも「今の幸福を大切にして楽しむ」という価値観を重視します。また、情報リテラシーの高さを生かし、さまざまな情報の中から不確実な世の中における幸福のヒントを探し出そうとします。ただし、その主たる情報源は「SNS(Twitter、Facebook、Instagram、TikTokなど)」であり、SNS上でインフルエンサーなどが表現する魅力的な生活を模倣することで、幸福感を得ようとする傾向があります。
しかし、SNS上の情報は絶えず変化するため、Z世代は多種多様な幸福イメージを取り入れてしまい、迷いや葛藤を感じることもあります。膨大な情報の中から「自分にとっての幸福」を見出すことは難しく、SNSや口コミに基づく幸福の模索は、自身が「この情報通りの生活を送れていないと不幸である」といった感覚にもつながる懸念があります。「SNS疲れ」という言葉に代表されるように、膨大な情報を参考にするがゆえに、他者との比較から焦りや不安が生まれ、「自分らしさ」を見失いやすいといえます。
このような現象は、南アジアにあるブータンにおける状況からもうかがえます。2013年の世界幸福度ランキングで上位に入り、「世界一幸せな国」と言われていたブータンは、その後ランキングを急激に落とし、2020年以降はランキング圏外となっています。その主要因の1つに「インターネットの普及」が挙げられており、情報が増えることにより幸福度への影響があったとみられます。インターネットの普及によって情報量が増えるのはZ世代に限定されませんが、日々多くの情報に触れる彼/彼女らは、その影響をより強く受けると考えられます。

Z世代の労働価値観

Z世代は、急速に変化する社会情勢の中、実質賃金の低下、少子高齢化など、将来のキャリアに対する不安を抱えています。このような状況が「安定と保障」がZ世代にとっての重要な価値となっています。また、不確実な未来への備えとして「自身の市場価値を高めるキャリアを選択したい」と考えています。
2021年に大学4年生、大学院2年生を対象に実施した厚生労働省の調査報告[ 1 ]においても、大学生にとっての働きたい組織の特徴が以下のように見て取れます。

  • 「リスクをとり、チャレンジングな事業成長を目指している」よりも「安定し、確実な事業成長を目指している」を支持する
  • 「短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスもかかる」よりも「短期での成長はしにくいが、体力的・精神的なストレスがかからない」を支持する
  • 「その会社に属していてこそ役に立つ、企業独自の特殊な能力が身に付く」よりも「どこの会社に行ってもある程度通用するような汎用的な能力が身に付く」を志向する

また、Z世代は「今の幸福感」を大切にします。仕事が現在の充実した生活の一部となり、仕事でもポジティブな感覚を持って働けることに意義を見出します。「どうせ働くなら楽しんで働きたい」「辛い思いをしてまで働く価値を感じない」などの思いを抱え、プライベートが損なわれる働き方は避ける傾向にあります【図表1】。
総じてZ世代の労働価値観は、「安全な職場環境で自身のキャリアアップにつながる仕事に前向きな気持ちで取り組め、プライベートの充実との両立が可能な生活を重視する」とまとめられます。Z世代の離職防止などを検討する際にも、労働価値観は重要なテーマです。これらすべてを満たす環境を探すことは容易ではありませんが、労働価値観を満たす環境であるほどに仕事へのエンゲージメントが向上するのは確かでしょう。

【図表1】Z世代の労働価値観
Z世代の労働価値観
(出所)当社作成

Z世代の支援

Z世代は、膨大な情報の中から自分らしい幸福のあり方や働き方を模索しています。しかし、不確実な世界の中で確固たる自分の羅針盤を持つことは容易ではありません。だからこそ、Z世代に対して予測困難な未来を進む不安を抱えながら、試行錯誤と変化を重ねて自分らしさを形成できるよう支援が重要です。その際、彼/彼女らの自分らしさを損なわないよう、サポートする側が「あるべき姿」を示す前にまずは「ありたい姿」に耳を傾けましょう。Z世代の幸福感や労働価値観を否定せず、定義せず、一緒に試行錯誤を重ねていくことが、真に彼/彼女らを支えることにつながると考えます。
次回以降のコラムでは、Z世代の特徴を踏まえた具体的なコミュニケーション方法について解説していきます。

【参考文献】
World Happiness Report “World Happiness Report 2013” https://worldhappiness.report/ed/2013/ (最終確認日:2024/3/28)

【関連サービス資料】
Z世代リテンションプログラム
エンゲージメント向上のためのキャリア開発支援

【関連サービスページ】
組織活性化
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【引用文献】
1 ]厚生労働省「新しい時代の働き方に関する研究会 報告書 参考資料(2023年11月13日)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/001166380.pdf (最終確認日:2024/3/28)

執筆者

  • 福田 潤也

    コンサルティング事業本部

    組織人事ビジネスユニット HR第4部

    コンサルタント

    福田 潤也
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