研究開発に対する公的資金をめぐり、近年、不正使用が次々に明るみに出て、科学技術立国政策の下で急増してきた公的研究資金が有効活用されていないのではないかとの疑念が生じるようになった。こうした状況に対処するため、政府が、研究資金の《「不合理な重複」および「過度な集中」を排除》する方針を打ち出した結果、単純に「重複」を避ける傾向がみられるようになった。
本調査研究では、この現状に対し、公的研究資金が有効に活用されていない事例があるのは、単純に「重複」「集中」している状態が原因なのではなく、その「重複」「集中」が“無意識”に生じているためではないかとの仮説を立てた。すなわち、重要な研究課題に“意識的”に「重複」「集中」を図ることは、効率的かつ有効なケースもあるとの考えである。
そして、“無意識”な「重複」「集中」が生じる理由は、公的研究資金を配分された研究課題の成果に関する評価結果が、公的研究資金の配分審査段階にフィードバックされておらず、活用されていないためであり、その背景として、評価システムの問題、評価と配分審査のリンケージの問題、配分審査の体制の問題の3つの問題があることを明らかにした。
最後に、それぞれの問題の解決方策案として、評価項目を見直すことや、他制度によるものも含めて過去の評価結果を配分審査時に容易に活用できるようにすること、また、評価については外部評価を中心に据える一方で、配分審査については内部の意志を反映させるため「プログラムオフィサー(PO)」や「プログラムディレクター(PD)」の配置を促進すること等を提案した。
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