PFI事業におけるVFM評価の適正化に向けて

2010/05/17 川﨑 昌和
PFI

PFI事業を推進する上で、行政担当者の大きな関心となるのが、PFI手法を導入することでの財政的なメリットを示す指標であるバリュー・フォー・マネー(VFM)がどの程度確保されるか、ということである。
これまでのPFI事業を俯瞰すると、PFI手法導入可能性調査段階や特定事業選定段階では、VFMの割合が概ね5~10%(サービス購入型の場合)という事例が多くなっている。また、事業者選定後の確定VFMでは、公募の競争性が確保されたかどうかなどによって、各事例によって大きな差が出てきている。後発のPFI事業は、先行事例におけるVFMの割合:パーセンテージの実績値を参照しながら、やや安全側の値を見込んでいるものが多くあるようだ。
しかしながら、VFMについて上記のようにパーセンテージで比較することが一般化していることに筆者は少々疑念を持っている。というのもVFMの算出において、PFI事業の収益上の特性によってVFMパーセンテージが大きく異なるという構造になっているにも関わらず、パーセンテージの数値のみで議論されることが多いからである。PFI事業は、収益性のほぼない純粋な公共事業を対象としたサービス購入型のみならず、基本的に公共財政負担のない独立採算型、またその中間とも言えるジョイントベンチャー型というように、収益構造自体が異なるものが含まれている。その一方で、単に「公共財政負担がどの程度の割合縮減されたか」というVFMパーセンテージの観点では、当然ながら分母(=PSCにおける公共財政負担額)が小さくなる独立採算型やジョイントベンチャー型が大きな削減割合になるのである。以下の図に示すように、事業コスト(支出)の全体額から利用者からの徴収料金等による収入を差し引きしたものが公共財政負担額として扱われるためである。また、通常は収入面でもPFI事業の効果による収入増加が見込まれる。

VFM算出における条件の違い

この収益特性の違いについて内閣府のガイドラインでは、ジョイントベンチャー型や独立採算型についても、「PFI事業として実施することにより効率的かつ効果的に実施できるかという評価を行うものとする。」(『VFMに関するガイドライン』内閣府 平成13年7月(平成20年7月改定))との言及はあるが、算出されるVFMパーセンテージ評価の取り扱いに関しては明確な言及がされていない。
独立採算型やジョイントベンチャー型も含めたVFMパーセンテージの取り扱い方法を統一化するには、例えば公共負担額ベースでの算出のみならず、事業コスト全体を分母としたVFM算出上の標準としたり、P-IRRなどの経営指標を同列に並べた総合的評価を標準とするなどの対応が、今後必要になってくると思われる。

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