情報通信機器を活用するのが「在宅ワーク」

在宅ワークとは、「パソコン等の情報通信機器を活用して、請負契約に基づき、サービスの提供などを行う在宅での仕事」のことで、一般的には、個人事業主・SOHOの働き方といえる。類似のものとして「在宅勤務」があるが、これは企業の従業員が業務の一部を自宅で行うものである。両方とも情報通信機器を活用するという点では共通しており、総称として「テレワーク」と呼ばれることもある。なお、「内職」と在宅ワークが混同されることがあるが、内職は情報通信機器を使うというよりは、小さい商品を組み立てたり、シール貼りをするといった手作業的なものが多い。
在宅ワークには多様な仕事がある。広く知られている業務としては、データ入力・集計、資料の電子化などの「事務系業務」があげられる。その他、記事を書くライターやテープ起こしなどの「編集系業務」、調査・マーケティング支援や電話対応業務などの「ビジネス支援系業務」、DTPデザインやイラスト制作などの「デザイン系業務」などもある。
また、パソコンやインターネットなどITスキルがある人には、ホームページ作成・運営といった「Web関連系業務」は主な業務の一つといえる。また、ｅラーニングの普及に伴い、ｅラーニングの「コンテンツ制作業務」などの可能性も広がっている。
在宅ワークは、育児や介護などの事情で、外出して長時間働くのが難しい人から、ITなど高度なスキルを持って独立して仕事をしたい人まで、様々なニーズに対応した働き方といえる。なお、個人で発注者から仕事を請け負うだけでなく、仕事を仲介するエージェント機関（仲介機関）に登録して、そこからの紹介で仕事を得る方法がある。
さて、在宅ワークをする上で、どのようなスキルが必要なのだろうか？

在宅ワークに必要なスキルとは

在宅ワークに必要なスキルとしてまず思いつくのは、パソコンやインターネットを使いこなす「ITスキル」と、業務分野ごとの「専門性」である。ただし、発注者が重視しているのはそれだけではない。在宅ワーカーであっても、一般的な職場で求められるのと同様、基本的なビジネスマナーやルールへの理解といった「ビジネススキル」、業務を円滑に進める上での「コミュニーション能力」は欠かせない。在宅ワーカーだから大目にみられるわけではない。普段から対面で接しているわけではないので、より注意を要することもある。
発注者側からみると、「業務を発注した後に必要な連絡を適宜よこさないので不安になる」、「発注内容の確認の問い合わせをしないために期待通りのアウトプットがでてこない」などの問題を避けたいので、「ビジネススキル」と「コミュニケーション能力」は必須といってよい。なお、在宅ワーカーの仲間同士でチームとして仕事を請け負う場合には、仲間同士での「コミュニーション能力」をベースにした「協働力」も必要となろう。
これらを整理したのが、図 1の「スキルを考える”２つの軸”と発展段階」である。在宅ワーカーに必要なスキルとして、X軸に「ITスキル」と「専門性」、Y軸に「ビジネススキル」と「コミュニケーションスキル」を設定している。そして、X軸とY軸をそれぞれ3段階に分けると9つのマトリックスができ、何に重点を置けば良いのかを考える上でのヒントになろう。

図 1 スキルを考える”２つの軸”と発展段階

注：図中の例は、あくまで参考です。
出所：三菱UFJリサーチ＆コンサルティング株式会社が作成

柔軟な働き方の一つとして～キャリアの断絶を避けるためにも～

在宅ワークは、IT革命が叫ばれた1990年代後半から一時期、大変注目された。しかし、近年は個人情報保護法の施行などで、企業が情報セキュリティ面への懸念で、技術的な問題はかなり解決しているが、個人事業主・SOHOへの発注は慎重になる傾向にあり、必ずしも簡単に仕事が得られるわけではない。そのため、前述の”２つの軸”に沿ったスキルを身につけて、在宅ワークに取り組むことが望ましい。
在宅ワークは、多様な働き方の一つである。例えば、育児に手間がかかる間は在宅ワーク、時間的な余裕が出てきたら企業に勤めるなど、自らのキャリアステージに応じて使い分ければよい。また、在宅ワークで仕事を続けることで、仕事の面での実質的なキャリアの断絶は防げるのもメリットの一つといえる。
東日本大震災以降、フレキシブルな働き方について、ますます関心が集まっている。在宅ワークは、そのような働き方の選択肢の一つとして、あらためて注目されていくであろう。

多様な働き方としての在宅ワーク

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